遠距離介護になりそうな時必見!かかる費用や負担を減らす方法を介護福祉士が解説

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離れて暮らす親の介護に、不安を感じていませんか?遠方の親の介護を円滑に進めるためには、遠距離介護の課題点を踏まえて、最適な方法を選ぶことが大切です。

費用面の負担や仕事と介護の両立ができるかなど、遠距離介護を始めるには考えなければならないことが沢山あります。課題を1つずつ明確にしていくことで適切な対策と心構えができ、安心して介護を進められるでしょう。

この記事では、遠距離介護の基礎知識から、緊急時の対応、施設選びのコツまで詳しく解説します。遠距離介護をスムーズに行うためのポイントが知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

遠距離介護とは


遠距離介護とは、遠方に住む子どもが高齢の親を介護することです。介護が必要な親族が遠方に住んでいるため、直接的な介護を日ごろから行うことが難しい状況である場合に、遠距離介護は選択肢の1つになります。

遠距離介護では毎日顔を見て介護することは難しいため、定期的に実家に帰省したり、電話やビデオ通話で様子を伺ったりしながら、介護を続けていきます。なお、親の居住地との距離が遠ければ遠いほど、訪問頻度を保つことが難しくなり、経済的負担も大きくなる傾向です。

遠距離介護を円滑に進めるには、兄弟姉妹や親戚、地域住人やケアマネジャーなど、周りの人のサポートや協力を得ることが不可欠です。親や家族の状況によってさまざまな課題が考えられるため、状況に合わせてサポートやサービスを導入するなど、工夫しながら進めていくことがポイントになります。

 

遠距離介護による帰省の頻度はどれくらい?


帰省の頻度は、親の状態や介護者の仕事や家庭の状況によって大きく異なります。しかし一般的には、週に1度から月数回程度が目安です

親の生活状況が自立している場合や、地域の介護サービスを利用しているなど適切なサポートが受けられている場合は、月に1〜2度の訪問で問題ないケースもあります。その場合でも、定期的な電話やビデオ通話で親の近況を確認することが望ましいでしょう。

また、緊急時や状態が悪化した場合は、より頻繁に帰省する必要が出てくることもあります。必要なときに連携が取れるよう、本人や関係者との連絡体制を整えておくことが大切です。

 

遠距離介護にかかる費用


遠距離介護にかかる主な費用は、次のとおりです。

 

交通費 車、バス、新幹線、電車、飛行機などで移動する際の費用
通信費 オンラインツールや見守り機器などのICT機器を活用する際の通信費
介護サービス費 訪問介護、デイサービスなどの介護サービスを利用する場合にかかる費用
住宅修繕費 親の家をバリアフリーにするための改修費用
福祉用具レンタル費 車椅子、歩行器、置き型手すりなどの福祉用具をレンタルする場合の費用

 

それぞれ、親の介護状況や住宅の状況、立地などによって費用が変動します。この中でも、遠距離介護において負担が大きくなりやすいのが交通費です。移動手段によって費用は異なりますが、住居の距離が遠いと1回あたりの交通費が高額になります。帰省する頻度が高いと、費用面に頭を悩まされることも少なくありません。

 

介護サービスの利用は、親の状態や家族の状況にあわせて検討しましょう。介護保険を利用することで帰省頻度を調整でき、全体的な費用を抑えられる可能性があります。

 

また、住宅改修や福祉用具のレンタルは、介護の負担を軽減するために有効な手段です。必要に応じて自宅の環境を整えることで、親の自立した生活を支援できます。無理なく遠距離介護を続けるためにも、最適な方法を選ぶことが大切です。

 

遠距離介護のメリット


遠距離介護にはさまざまな課題がありますが、一方で次のようなメリットがあります。

 

  • 転居の必要がない
  • 住み慣れた家で生活が続けられる
  • 一緒に暮らすよりも介護負担が少ない

 

ここから、遠距離介護のメリットについて確認していきましょう。

 

メリット①転居の必要がない

遠距離介護では、介護者も被介護者のどちらも、生活スタイルを変えることなく同じ住居に住み続けられます。そのため、転居の際に引っ越し費用がかかることはありません。

遠距離介護は、同居による生活パターンの変化やストレスを避けることにもつながります。引っ越しによって生じる環境の変化は、双方にとってストレスとなる場合があるためです。

また、介護者が実家に移り住む場合、離職が必要になる場合がありますが、遠距離介護では仕事を辞める必要がありません。遠距離介護は、転居や離職といった生活の大きな変化を伴うことなく、介護を続けられるメリットがあります。

 

メリット②住み慣れた家で生活が続けられる

遠距離介護は、親が自立した生活を続けられることや、「子どもに負担をかけたくない」と考える親の意思を尊重することにもつながります。子どもに頼りきりになることなく、自分らしい生活を送ることで、自信や生きがいを感じ、より充実した日々を送れる可能性もあるでしょう。

また、親が同じ家で生活を続けることで友人や近隣住民との交流が保たれ、孤独感が軽減されます。 地域活動に参加したり、近所の人々と気軽に話したりすることで、心豊かな生活を過ごすことにつながります。

 

メリット③一緒に暮らすより介護負担が少ない

遠距離介護では、介護の一部を地域のサービスや専門機関に任せることが一般的です。 プロによる介護を取り入れることで、介護の質が向上するだけでなく、介護者の負担を軽減できるため、双方にとってプラスに働くことが期待されます。同居介護で起こりやすい過干渉や衝突を避け、親子関係を良好に保ちやすい点もメリットでしょう。

また、遠距離であるため、介護者自身の仕事や家族生活に専念する時間を確保しやすくなります。同居では介護者が自分の時間を犠牲にしてしまうケースも少なくありませんが、遠距離介護ではそのリスクが軽減されます。

 

遠距離介護のデメリット


遠距離介護には、下記のようなデメリットもあります。

 

  • 緊急時の対応が難しい
  • 日々の様子を把握しにくい
  • 交通費や電話代などの経済的負担が大きくなる

 

遠距離介護を実施する場合は、これらのデメリットについて把握することが大切です。それぞれの項目を確認しておきましょう。

 

デメリット①緊急時の対応が難しい

遠距離介護では、親のケガや体調面の悪化などが発生した際に、すぐに駆けつけることが難しいという課題があります。とくに一人暮らしの親の場合は、緊急事態が発生した際に発見が遅れてしまう可能性もあるため、事前対策が必要です。

 

緊急時の予防としては、親との定期的な連絡を行うことで、いつもと違う状況にも気づきやすくなります。また、地域住民との連携体制の構築や、必要に応じた見守りサービスの導入など、転倒や急病の際でも適切な連携が取れるようにしておくことも有効な対策です。

 

そのうえで緊急時には、なるべくすぐに帰省できるようにしておくことが望ましいといえるでしょう。介護の状況について職場へ相談しておくなど、有事の際の対応について考えておく必要があります。

 

デメリット②日々の様子を把握しにくい

遠距離介護では、親と子どもが離れて暮らすことになるため、親の些細な状況に気づくことが難しくなります。とくに、認知症の初期症状や体力の低下は日常の中で少しずつ進みます。親の健康状態の変化に気がつくのが遅れるケースも少なくありません。

 

遠距離でも様子を把握するためには、親と交流のある人物から情報収集を行うことが大切です。親が介護サービスを利用している場合は、ヘルパーやケアマネジャーなどから、客観的な視点から見た様子や、健康状態の変化について詳しく尋ねることができます。

 

定期的に連絡を取る際には、以前と変わりがないか気にかけておくようにしましょう。できる範囲で、会話の内容や訪問した際の様子について記録しておくことも、変化を知る手がかりとなります。

 

デメリット③交通費や電話代などの経済的負担が大きくなる 

遠距離介護では、移動費や通信費が大きな負担になります。 とくに親の住む地域が遠方の場合、飛行機や新幹線など高額な交通手段を利用することになるでしょう。

帰省頻度をカバーするため、電話やビデオ通話、ITツールなどを活用することもあるかもしれません。しかし、頻繁に電話やビデオ通話を行う場合は通信費がかさんだり、機器の導入に費用がかかったりする場合もあります。

さらに介護サービスなどの利用にも費用がかかるため、同居するよりも費用面の負担が大きくなりやすい点はデメリットといえるでしょう。

 

遠距離介護を始めるために必要な準備


いざ、遠距離介護を始めることになった時、何をどのように準備すればよいのか、迷う方も多いのではないでしょうか。ここでは、遠距離介護を始める前に、必ず確認しておきたい5つのポイントについて解説します。

 

  • 親の健康状態や生活状況について把握する
  • 介護サービスの利用状況を確認する
  • 周囲の人との関係性を築いておく
  • 周辺の入居型施設について情報収集しておく
  • 勤務先の休暇制度について確認する

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

親の健康状態や生活状況について把握する

遠距離介護を始めるうえで、まず最初に把握しておきたいのが、親の健康状態や生活状況です。

具体的には、次のような項目について詳細な情報を把握しておくことが大切です。

 

  • 持病の有無
  • 本人の精神状況
  • 生活場面での日常動作
  • 地域社会での交友関係
  • 生活パターン
  • 居住環境
  • 経済状況
  • 必要な介助

 

これらの情報を把握することで、必要な介護サービスや、親に合った住まいの形などを検討できます。また、生活状況や健康状態は変わることがあります。定期的に電話などで安否確認を行い、少しでも変化があれば、迅速に対応できるようにしておくことが大切です。

 

介護サービスの利用状況を確認する

親がすでに介護サービスを利用している場合は、どのようなサービスを受けているのか、担当のケアマネジャーは誰かなどを確認しておきましょう。ケアマネジャーは、介護に関するさまざまな手続きやサービスの利用について専門的な知識を持っており、遠距離介護の際は頼れるパートナーになります。

親の状況を把握するためにも、ケアマネジャーとの情報共有体制を整えておくと安心です。訪問介護やデイサービスなどの利用状況にあわせて、自分や家族ができる支援について相談しておくとよいでしょう。

介護サービスを利用していない場合は、要介護認定の申請を検討しましょう。要介護認定が降りた場合は、区分に応じて必要な介護サービスが受けられます。

 

周囲の人との関係性を築いておく

遠距離介護では、親の周囲の人との連携が非常に重要になります。近所に住んでいる親戚や友人、地域の包括支援センターなど、親をサポートしてくれる人との関係性を築いておくようにしましょう。

親が体調を崩したり、家の中に閉じこもってしまったりした場合に、近所の方に声をかけてもらえるかもしれません。地域の人との交流は、精神的な支えとなり、孤独感を軽減することにもつながります。

 

周辺の入居型施設について情報収集しておく

介護の状況によっては、将来的な施設入居も検討する必要があるかもしれません。事前に周辺の入居型施設について、種類や費用、サービス内容などを調べておくことが大切です。入居型施設には、公的施設と民間施設があり、主な種類は以下のとおりです。

公的施設 民間施設
介護老人保健施設(老健) 医療ケアと介護を一体的に提供する施設 介護付き有料老人ホーム 介護が必要な方が入居する有料の老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養) 要介護度が重く、常時介護が必要な方が入居する施設

入居には審査があり、待機期間が長い傾向

住宅型有料老人ホーム 自立した生活を送れる高齢者が入居する有料の老人ホーム
介護医療院 医療処置が必要な高齢者が入居する施設 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 介護サービスの提供が義務付けられた賃貸住宅
グループホーム 小規模な共同生活の場で、認知症などの生活に困難を抱える高齢者が入居する施設 ケアハウス 軽度の要介護状態の高齢者が入居する施設

 

施設を選ぶ際には、親の希望や介護の必要な度合いなどを考慮し、最適な場所を選ぶようにしましょう。

 

勤務先の休暇制度について確認する


遠距離介護では、定期的に実家に帰省し親の様子を見に行く必要があります。仕事との両立がスムーズにいくよう、勤務先の休暇制度について確認しておきましょう。

仕事と介護を両立したい場合は、帰省頻度にあわせた勤務日数の調整について事前に相談することをおすすめします。可能であれば、出勤時間を柔軟に調整できるフレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方を選ぶことで、仕事と介護の両立がより円滑になるでしょう。

 

遠距離介護になりそうな時に負担を減らす重要なポイント


離れた場所に住んでいても、適切な準備と対策を行うことで負担を軽減し、安心して介護を続けることができます。次のポイントを押さえて遠距離介護に臨みましょう。

 

  1. ITツールを活用する
  2. 遠距離介護で利用できるサービスを導入する
  3. 緊急時の連絡体制を整える

 

それぞれのポイントを解説します。

 

遠距離介護のポイント①ITツールを活用する

ITツールは、遠距離介護におけるコミュニケーションや情報の共有を円滑にするうえで有効な手段です。昨今では、離れて暮らす親の様子を確認できるさまざまな機能を持ったものが普及しています。

遠距離介護に活用できるITツールには、IoT家電やスマートスピーカー、見守りロボットなどがあります。これらを活用することで遠隔地からでも親の様子を確認でき、コミュニケーションの円滑化につながるでしょう。

 

遠距離介護のポイント②遠距離介護で利用できるサービスを導入する

遠距離介護ではさまざまなサービスを利用することで、負担を軽減できます。介護保険サービスだけでなく高齢者向けの民間サービスなどがあるため、状況にあわせて検討するとよいでしょう。具体的には、次のようなサービスが挙げられます。

 

  • 家事代行サービス
  • 配食サービス
  • 見守りサービス

 

これらのサービスを適切に利用することで、親と関わりを持つ人が増え、安心して遠距離介護を続けやすくなります。

 

遠距離介護のポイント③緊急時の連絡体制を整える

遠距離介護では、緊急時の迅速な対応が非常に重要です。そのため、事前に緊急時の連絡体制を整えておく必要があります。

地域の包括支援センターやかかりつけ医の連絡先を把握することはもちろん、近所に住んでいる親戚や友人など、緊急時に連絡を取れる人を見つけておくことも大切です。

また、親が持病を持っている場合は、かかりつけ医に事前に相談し、緊急時の対応について指示を受けておきましょう。いざという時に慌てず対応するためにも、事前準備に余念を欠かさないようにしてください。

 

遠距離介護のお悩みQ&A


 

きょうだいとの話し合いはどうする?

遠距離介護において、兄弟姉妹との連携は非常に重要です。しかし、それぞれの状況や考え方、価値観が異なるため、話し合いが難航することもあります。

 

ポイントとしては、単に「手伝ってほしい」ではなく、「週に1回、母の様子を見に行ってほしい」「病院への送迎をお願いしたい」など、具体的な提案をすることで建設的な話し合いにつながりやすくなります。その際、「母に安心して暮らしてもらいたい」など、共通の目標を定めることで、協力体制を築きやすくなるでしょう。

 

また、誰がどのような役割を担うのか、具体的な役割分担を決めておくことも重要です。話し合いが難航する場合は、ケアマネジャーや地域の相談窓口などに相談し、第三者の力を借りるのも1つの方法です。

 

の介護によって自分の仕事に影響が出てきたら?

介護と仕事の両立は、多くの介護者が抱える悩みです。周囲の理解を得るために、まずは職場に相談してみましょう。介護休業制度を利用できる可能性もあります。介護が必要になることがわかった時点で早めに職場に相談しておくと、休業や勤務時間の調整についてスムーズに提案を受け入れてもらいやすくなります。

 

また、ヘルパーやデイサービスなどを利用することで、仕事への影響を最小限に留めることにつながります。介護の悩みを一人で抱え込まず、兄弟姉妹や配偶者など、信頼できる人に相談しながら、仕事についての解決策を見つけることが大切です。

 

施設に入れることも考えているけれど、どうやって探したらいい?

施設への入所を検討する際は、まず本人の状況をもとに希望条件を明確化しましょう。具体的には介護の度合いや必要な医療サービス、立地条件、費用など、さまざまな観点から検討することが大切です。

 

情報収集を行う際は、インターネットを使って調べたり、地域の相談窓口で尋ねてみたりするとよいでしょう。パンフレットやホームページで分からない雰囲気について知るためにも、目ぼしい施設を見つけたら実際に見学しに行くのがおすすめです。

 

兄弟姉妹だけでなく、本人の意思を尊重しながら入所について検討を進めてください。

 

まとめ


遠距離介護にはメリットがある一方で、さまざまな課題に対処する必要があります。周囲の協力や地域の支援を活用することで負担を軽減し、遠距離介護を乗り越えることにつながるでしょう。

 

遠距離介護は準備が万全であれば、安心して続けていくことが可能です。介護の悩みは一人で抱え込まず、周囲の人や専門家などに相談しながら、最適な方法を見つけてください。

 


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