はじめに
介護職は、身体や認知機能に障害を持つ人々の日常生活を支援する職業であり、
高齢化社会が進む中で、介護職に対する社会的な需要が増加しています。
このような背景のもと、介護職員の労働環境の改善が急務とされ、その取り組みのひとつとして「介護処遇改善手当」の導入がありました。
直近では2024年6月から施行され、今、介護職の給料が上がっています。
この記事では、介護処遇改善手当にスポットを当て、介護処遇改善手当の基本的な内容について、どのようなものか?もらえる人や支給額は?など、気になる介護処遇改善手当に関する情報をまとめて解説します。
難しく思える介護処遇改善手当を最大限利用する方法や支給額について理解し、お得に働きましょう。
介護職の処遇改善手当とは
介護処遇改善手当は、2019年に導入されました。
簡単に説明すると、介護職員の給与をアップするための制度です。
介護職は低収入や離職率の問題があり、介護職の人材不足が深刻化している背景から、介護処遇改善手当が導入されました。
介護処遇改善手当の制度が生まれた背景や、導入の目的を詳しく解説します。
介護職の処遇改善手当が生まれた背景
介護処遇改善手当の導入背景には、介護職の低い給与水準と高い離職率が大きな課題として挙げられています。
他業種と比較しても、介護職の給与が低い現実が存在します。
適切な報酬が保証されない状況では、必要な人材が介護職に魅力を感じることは難しくなります。
介護職に就く人々は、家庭を持つ者もいれば、独身で一人暮らしをする者もおり、得た給与で生計を立てなくてはならないからです。
このような介護職の低報酬と人材流出の問題を解決し、人手不足に対応するために、介護処遇改善手当が生み出されました。
介護職の処遇改善手当の目的
介護処遇改善手当の目的は、必要な人材を確保し、定着率を高めることにあります。
制度により介護職員の給与が向上し、適正な報酬を得られるようになると、新規人材の引きつけと現場スタッフの継続的な雇用が期待されます。
たとえば、これまで給与の低さから介護職を敬遠していた人々が、介護処遇改善手当による給与の増加を見て介護職に魅力を感じるようになるかもしれません。
また、給与の改善や労働環境の向上により、既存の職員が職を離れる可能性が低くなり、より長期的な勤務が期待されるでしょう。
介護職の処遇改善手当(新処遇改善加算)の施行時期
新処遇改善加算の施行は2024年6月です。
(参考)令和6年度の申請様式等|厚生労働省
介護職の処遇改善手当(新処遇改善加算)対象外のサービス
旧3加算で対象外だった以下のサービスは、新加算でも引き続き対象外となります。
介護職の処遇改善手当をもらえる人は?
介護職の処遇改善手当は、介護職のための制度です。
そのため、介護職の処遇改善手当制度を利用するには介護施設で働いており、直接介護に関わっている必要があります。
また、介護職の処遇改善手当の対象とならない事業所もあるため、もらえる条件を詳しく解説します。
介護職の処遇改善手当をもらえる条件は?
介護職の処遇改善手当を受けるための条件には、以下の3つが挙げられます。
・介護職員処遇改善加算を取得している事業所で勤務していること
・介護職員としての職務に就いていること
・介護報酬の対象となるサービスを提供していること
つまり、介護職処遇改善加算を取得している事業所に所属し、そこで介護職員として働き、介護報酬の対象サービスに関わっていることが、手当を受けるための基本的な要件となります。
【2024年6月追記】
2024年6月より施行される新処遇改善加算では職種による配分ルールが廃止され、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある介護職員に重点的に配分することとしつつ、事業所内での柔軟な配分を認める」とされております。
▼ 注意点
「柔軟な配分」の部分ですが、職務内容や実態に見合わない著しく偏った配分はNGです。
(例)一部の介護職員に手当を集中させる/同じ法人内の一部の事業所だけに改善加算を集中させる など
事業所の加算要件とは?
介護関連の事業所が介護職員処遇改善加算を取得するためには、以下2つの条件を満たす必要があります。
・キャリアパス要件
・職場環境等要件
キャリアパス要件では、さらに以下の3つに分けられています。
1.職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
2.資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
3.経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
事業所は1~3の条件のいずれか、またはすべてを満たすことで加算が適用されます。
すべての条件を満たすと事業所が得る加算額が高くなり、一部の条件のときは加算額が減少します。
そのため、キャリアパス要件をすべて満たす事業所で働くことが、介護職員にとってより高い給与の可能性を意味します。
職場環境等要件では、下記のいずれかの条件を満たす必要があります。
・入職促進に向けた取り組み
・資質の向上やキャリアアップに向けた支援
・両立支援・多様な働き方の推進
・腰痛を含む心身の健康管理
・生産性向上のための業務改善の取り組み
・やりがい・働きがいの醸成
職場環境等要件でも、より多くの条件を満たすほど、事業所は高い加算額が得られる仕組みです。
介護職の処遇改善手当をもらえない人がいる?
介護職員処遇改善加算の対象となっている事業所で働いていても、直接介護に関わらない仕事の場合は、介護職員処遇手当を受けることはできません。
たとえば、栄養士・理学療法士・清掃・事務職などが挙げられます。
また、介護に関わらないサービス管理責任者も、介護職員処遇手当の対象となりません。
介護職の処遇改善手当はどうやってもらえる?
介護職員処遇改善加算の支給方法には規定がありません。
そのため、施設や事業者によって支給の時期や方法が異なります。
手当のもらい方は以下で詳しく解説しますが、詳細は施設や事業所に確認するのが一番です。
介護処遇改善手当の支給方法
介護処遇改善手当の支給方法は、主に以下の3つが挙げられます。
・基本給の増額
・賞与に反映する
・特別手当として支給
ひとつ目は、毎月の給与に手当を上乗せするパターンです。
毎月の給与に一定額が上乗せされるため、安定した給与を得ることができます。
ふたつ目は、賞与として一括で手当てを支給するパターンです。
毎月の給与に手当は含まれておらず、年2回や年度末1回に手当をまとめて支給します。
最後は、昇給を考慮し毎月手当が増えていくパターンです。
介護処遇改善手当の支給額
介護処遇改善関連加算は、「介護職員の処遇改善に全額使用する」という原則が設けられています。
そのため、事業所に支給される加算額は、原則として職員の処遇改善に向けて使用される必要がありますが、その具体的な使用方法については厳密に定められておらず、事業所によって使い道が異なります。
たとえば、ある事業所では加算額を職員の給与増加の直接反映を選択するかもしれません。
また他の事業所では、加算額を使って職員のスキルアップを目指し、研修費用に充てる場合があります。
さらに、職場の環境改善に関わる費用として加算額を利用する事業所も存在します。
このように、加算額の活用方法は事業所により多様であるため、どのように使われるかを事前に確認するとよいでしょう。
他にもある介護職の加算とは?
介護職員処遇改善手当以外にも、特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の2つの加算手当があります。
どちらも、介護職員の賃金アップや、職場環境の改善が得られるため、事前に確認しておきましょう。
特定処遇改善加算
特定処遇改善加算は、介護職員の働きやすさや賃金体系の整備を目的とした制度です。
介護職員処遇改善手当では対象となる事業所に勤める介護職員に対する加算でしたが、特定処遇改善加算は介護職員のキャリアアップを応援する側面があります。
技能や経験を豊富に持っている人材や、勤続年数の長い介護職員に対する加算で、事業所は柔軟な運用が認められています。
加算の適用では、技術や経験が豊富な人材に関する具体的な基準は事業所が定めることができ、長期勤続の職員は勤続年数10年以上を対象とするルールです。
また、介護職員以外でも加算を得ることができます。
介護職員等ベースアップ等支援加算
介護職員等ベースアップ等支援加算は、処遇改善を実施する事業所が受けられる制度で、賃金の底上げを目的としています。
月々の賃金を引き上げるための加算で、賃金改善額の3分の2以上に充てなければならず、手当は基本給や毎月決まって支払う手当として活用されます。
介護職員だけでなく、介護業務に直接関わらない職員もこの加算の対象となり得ます。
目標としては、介護職員1人当たりの収入を平均で約3%引き上げることにあり、月額平均で約9,000円の賃金増加が期待されます。
派遣や転職エージェントの利用
介護職の給与は他業種と比較して低めだと指摘されており、様々な「介護職の処遇改善加算」制度が設けられています。
ただし、加算を受けるための条件は事業所によって異なるため、注意が必要です。
また、加算を提供する事業所に勤めても、その事業所が必要な条件の一部しか満たしていない場合、加算額が少なくなる可能性があります。
収入を増やしたいと考えている介護職の方は、転職エージェントの利用もひとつの選択肢です。
転職エージェントは、希望する条件やキャリアプランに合った求人を紹介してくれるため、収入向上を目指す際に理想的な職場を見つけやすくなります。
とくに地域に根ざした転職エージェントの利用は、ミスマッチを減らすため有効です。
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まとめ
この記事では、介護職の処遇改善手当に関する広範な情報を提供しました。
手当の目的は、介護職員の給与の向上と働きやすい環境の促進にあり、それにより介護職員の生活の安定とモチベーションの向上が期待されます。
制度の実施により、介護職の人材の獲得が容易になり、結果的に介護業界全体の持続可能な発展につながるでしょう。
転職を検討している方は、この制度を効果的に利用して、自身のキャリアアップや収入アップにつなげてみてください。
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