特定技能外国人介護人材は転職できる?退職の条件や転職リスクについて解説

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特定技能外国人介護人材は転職できる?

 

特定技能(介護分野)で働く外国人は、制度上は転職が認められています。ただし、在留資格の変更許可申請や届出義務など、日本人の転職とは異なる手続き・制約があり、受入れ施設側にも実務上の影響が及びます。

この記事では、転職の基本ルールから退職の条件、在留資格取消リスクとその対策、さらに統計データに基づく離職理由や定着のポイントまで、採用担当者が押さえておくべき情報を網羅的に整理しました。

 

特定技能の介護職員は転職できる?制度の基本ルール


特定技能の介護職員は転職できる?制度の基本ルール

 

特定技能は、人手不足が深刻な分野で一定の技能を持つ外国人の就労を認める在留資格です。介護分野もその対象であり、技能実習とは異なり、制度上「転職」が想定された設計になっています。

ただし、転職が可能であることと、実際にスムーズに転職できることは別の話です。まずは転職に関する基本ルールと、制度の前提を押さえておきましょう。

 

原則、同一職種(介護分野)内での転職は自由

特定技能の外国人は、同じ分野・同じ業務区分であれば転職が制度上認められています。介護分野で働いている人が、別の介護施設に移ること自体は禁止されていません。

ただし、ここで重要なのは「受入れ機関(勤務先)を変更する場合は、在留資格『特定技能』の変更許可申請が必要」という点です。出入国在留管理庁のQ&Aでも明示されており、転職は単なる雇用契約の切り替えでは終わりません。入管への届出や書類審査を経て、許可を得る必要があります。

出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」 

 

技能実習生との違い|技能実習は原則転籍不可

特定技能と混同されやすいのが技能実習制度です。両者は「外国人が日本で働く」という点では共通していますが、転職に関する扱いはまったく異なります。

技能実習は「技能移転」を目的とした制度であり、実習先の変更(転籍)は原則として認められていません。変更が可能なのは、倒産や法令違反など「やむを得ない事情」がある場合に限られます。

特定技能は「就労」が前提であり転職自体は制度上認容されていますが、変更許可申請や協議会手続など、実務上のハードルは低くありません。両制度の違いを表にまとめました。

 

観点 特定技能(介護) 技能実習(介護職種)
転職の可否 制度上可能(要件・申請が必要) 原則不可(例外的に転籍)
主な手続き 在留資格変更許可申請、届出、協議会手続 やむを得ない事情の立証、OTIT手続
制度の目的 人手不足分野の即戦力確保 技能移転・人材育成

出典:外国人技能実習機構「やむを得ない事情がある場合の実習先変更」 

 

転職ができるタイミング

特定技能の転職で最も注意すべきなのは、在留資格変更許可申請の審査中は新しい職場で働くことができないという点です。審査には通常1〜3か月程度かかるとされ、その間は収入が途切れます。

このため、実務上は「退職してから転職先を探す」のではなく、在職中に転職先を確保し、必要書類の準備や協議会手続を進めておくのが基本です。退職日は、申請準備の進捗と在留期限を逆算して設計する必要があります。

 

特定技能外国人が介護分野で転職するための必須条件


特定技能外国人が介護分野で転職するための必須条件

 

特定技能の転職は「転職先が決まれば完了」ではなく、本人・新受入れ先の双方が複数の要件を満たす必要があります。一つでも欠けると在留資格の変更許可が下りず、転職計画は制度上進められません。

介護分野で転職を成立させるために充足すべき主な条件を、項目別に見ていきましょう。

 

同一の業務区分(介護)である

特定技能の転職が認められる範囲は、原則として「同一の業務区分」内です。介護分野の特定技能であれば、身体介護等とそれに付随する支援業務が対象範囲となり、この範囲内での転職であれば、技能試験を再度受験する必要はありません。

他方、介護分野から別の分野(例:飲食料品製造業や建設業など)へ移る場合は、移動先の分野に対応した技能評価試験の合格が求められます。なお、分野を跨いで転職した場合でも、第一号の通算在留期間(上限5年)は合算されるため、残り期間にも注意が必要です。

出典:国際厚生事業団(JICWELS)Q&A 

 

技能試験・日本語試験の合格証明

同一分野・同一業務区分への転職であれば、技能試験の再受験は不要です。すでに取得している合格証明は、転職先が変わっても有効なものとして扱われます。

ただし、介護分野には注意点があります。他の分野と共通の日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト等)に加え、介護分野固有の日本語試験(介護日本語評価試験)が求められるためです。

初回の在留資格取得時にこれらをクリアしていれば、同一分野内の転職で改めて受験する必要はありませんが、書類として合格証明の提出が求められる場面があります。紛失していないか事前に確認しておくことが大切です。

出典:JITCO「特定技能 よくあるお問合わせ」(2025年12月8日時点) 

 

新たな受入れ先(法人)との雇用契約締結

転職には、新しい受入れ先との間で「特定技能雇用契約」を締結する必要があります。この契約は一般的な雇用契約とは異なり、入管法が定める基準に適合していなければなりません。

新受入れ先の法人には、支援計画の策定・実施体制、社会保険料・税の納付状況、過去5年以内に出入国関連法令や労働関係法令で不正・著しく不当な行為がないことなど、多岐にわたる要件が課されます。

雇用条件書や支援計画書、納税証明書など準備すべき書類も多く、外国人本人が転職を希望しても、受入れ先の要件が整っていなければ手続きは進みません。

 

「特定技能雇用契約」の基準を満たしていること

特定技能の雇用契約には、法令で定められた基準への適合が求められます。具体的には、日本人と同等以上の報酬水準であること、外国人であることを理由とした差別的取扱いの禁止、社会保険への適正加入、フルタイム勤務(週5日以上かつ年間217日以上、週30時間以上)などが挙げられます。

介護分野では、これらに加えて協議会の手続きが実務上の前提条件になります。転職先の事業所が介護分野の特定技能協議会に入会し、「入会証明書」に当該事業所が登録されていなければ、その事業所での受入れ(異動を含む)は認められません。

法人として入会しているだけでは足りず、事業所単位での登録が必要とされている点は見落としやすいため、転職者の採用を検討する施設は早めに確認しておくべきです。

出典:厚生労働省「介護分野における特定技能協議会『手続きの流れ』」 

 

特定技能介護職員が転職する際の手続き


特定技能介護職員が転職する際の手続き

 

特定技能の転職は本人だけで完結するものではなく、「旧受入れ機関」「本人」「新受入れ機関」の三者がそれぞれ期限付きの届出・申請を分担する構造です。手続きの遅延や漏れは在留資格の審査に直接影響するため、採用側も全体像の把握が欠かせません。

転職に伴う手続きの中でも、特に重要な3つのポイントを取り上げます。

 

入管への届出(離職・契約締結)の義務

退職(雇用契約の終了)が発生すると、本人と旧受入れ機関の双方に届出義務が生じます。

本人は、「所属(契約)機関に関する届出」を、届出事由の発生日から14日以内に提出しなければなりません。退職時だけでなく、新しい契約機関との契約締結時にも届出が必要です。

旧受入れ機関側は、退職理由によって必要な届出書類が異なります。自己都合退職や契約期間満了の場合は「特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1-2)」が中心になります。

一方、会社都合の退職(解雇・倒産等)では、これに加えて「受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4)」と、経緯を説明する書類(参考様式5-11/5-14/5-15等)の提出が求められます。

提出先は、本社(本店)所在地を管轄する地方出入国在留管理局です。提出方法は電子届出・郵送・窓口持参のいずれかで、期限はいずれも原則14日以内となっています。

出典:出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」 

 

在留資格(ビザ)の変更・更新手続き

受入れ機関を変更して転職する場合、在留資格「特定技能」の変更許可申請が必要です。申請は本人が行いますが、雇用条件書・支援計画書・保険料納付証明・納税関係書類など、新受入れ機関が準備すべき書類が大部分を占めます。

審査には1〜3か月程度を要するとされ、その間は転職先で就労できません。住居費や生活費を自己負担している外国人にとっては収入がゼロになる期間であり、退職のタイミングと申請スケジュールの慎重な設計が不可欠です。

なお、在留期限が迫っている場合には「特定活動」への移行により在留を継続できるケースもありますが、あくまで例外的な措置です。

 

在留資格取消リスク

退職後、最も注意しなければならないのが「在留資格取消し」のリスクです。入管法では、就労系の在留資格を持つ外国人が当該資格に応じた活動を継続して3か月以上行わない場合(正当な理由を除く)、在留資格を取り消し得ると定めています。退職後に次の就労先が決まらないまま3か月を超えると、この取消事由に該当し得ます。

回避のポイントは、退職前に申請書類の準備を前倒しで進めること、14日以内の届出を確実に行うこと、そして求職活動の事実(応募記録・面接日程・支援機関との連絡記録等)を書面で残しておくことです。「正当な理由」の有無は個別に判断されるため、説明できる材料を揃えておくことが重要です。

出典:出入国在留管理庁「在留資格の取消し」 

 

外国人材が転職を考える主な理由


介護分野で働く外国人材は、なぜ転職を考えるのでしょうか。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会が実施した「令和6年度 外国人介護人材定着度調査」によると、施設側が把握している過去5年間の離職理由は、以下のとおりです。

  • 介護以外の職種への転職(52.1%)
  • 賃金への不満(36.3%)
  • 病気(26.8%)
  • 他施設への転職(22.3%)

注目すべきは、転職先として神奈川・東京・愛知など都市部が上位に挙がっている点です。地方の介護施設にとっては、「採用しても都市部に流出してしまう」というリスクが現実のものとなっています。

一方、同調査では外国人材が「今の職場が良い」と感じる理由についても報告されています。

  • 職場内コミュニケーションが良好(66.5%)
  • 相談体制が整っている(55.7%)
  • 希望に合わせたシフト(52.5%)
  • 有休が取りやすい(52.2%)
  • 給料が良い(39.8%)

「給料が良い」は39.8%にとどまっており、賃金だけでは定着につながらないことが示唆されています。

出典:全国老人福祉施設協議会「令和6年度 外国人介護人材定着度調査 報告書」 

 

受入れ施設側が知っておくべき「転職者採用」のメリット・デメリット

転職を考える外国人材がいるということは、裏を返せば「転職者を受け入れる」選択肢もあるということです。転職者の採用には固有のメリットとデメリットがあり、制度面の留意点も含めて整理しておくことが、採用判断の精度を高めます。

 

メリット

転職者の最大の利点は、即戦力としての期待値が高いことです。すでに日本の介護現場で就労した経験を持つため、業務の流れや生活面の適応を終えているケースが多く、採用後の立ち上がりが早い傾向にあります。日本語力も入国直後の人材より向上していることが見込まれ、現場での教育コストが抑えられる可能性があります。

 

デメリット

一方で、在留資格変更許可が下りるまで就労を開始できないため、採用計画やシフト編成に不確実性が生じます。審査期間は1〜3か月程度かかり得るため、「内定を出したがいつ稼働できるかわからない」状態が続く点は織り込んでおく必要があります。

また、支援計画の策定・実施や入管への各種届出など、制度固有の事務負担が継続的に発生します。登録支援機関への委託費用も採用コストに上乗せされます。介護分野では協議会への事業所登録が前提条件となっており、この手続きが整っていないと転職者を受け入れることができません。

 

まとめ


特定技能(介護分野)の外国人は、制度上は転職が可能です。しかし実際には、在留資格の変更許可申請、協議会の事業所登録、14日以内の届出義務など、複数の手続きと要件を同時に満たす必要があり、計画性のない転職は成立しにくい構造になっています。

受入れ施設の立場からすれば、転職者の採用は即戦力確保の有効な手段になり得ます。ただし、審査期間中の就労不可リスクや事務負担を織り込んだ上で、採用スケジュールと支援体制を設計することが不可欠です。

また、統計データが示すとおり、外国人介護人材の定着は賃金だけでなく、職場のコミュニケーション環境や相談体制、シフトの柔軟性といった「働きやすさ」に大きく左右されます。採用後の定着施策まで含めた総合的な設計が、転職による人材流出を防ぎ、採用投資を回収するための鍵となるでしょう。

 

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