介護施設で特定技能外国人を受け入れるには?受け入れ可能な施設や条件を解説

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「うちの施設でも、そろそろ外国人材の受け入れを考えるべきなのか…」「受け入れ可能な施設や業務の線引き、手続きや支援体制まで把握しきれていない…」

そんな悩みを持つ経営者や施設長の方は少なくありません。

この記事では、受け入れ対象となる施設と対象外のサービス、特定技能人材が従事できる業務範囲をお伝えします。また、試験から採用までの流れや外国人スタッフへの必要なサポート内容についても解説いたします。

外国人材の受け入れについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

 

特定技能外国人の受け入れ可能な介護施設と業務内容


 

特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人は、法律で定められた介護施設や事業所で受け入れることが可能です。

具体的には、老人福祉法や介護保険法に基づく施設、障害者総合支援法に関連する施設、さらに生活保護法に基づく施設が対象となります。法律ごとに施設の役割や対象が異なるため、自施設が受け入れ対象に該当するかを理解しておくことが大切です。

 

受け入れ可能な介護施設の種類

ここでは、特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人を受け入れ可能な施設について紹介します。

 

老人福祉法・介護保険法関連の施設

老人福祉法や介護保険法に基づく施設は、特定技能外国人の受け入れ先として多く利用されています。主な受け入れ施設は、以下の通りです。

 

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護付き有料老人ホーム
  • グループホーム
  • ケアハウス

 

以上の施設は、いずれも日常生活に密接した介護サービスを提供しているため、慢性的な人材不足となっています。

 

なお、対象となるのはあくまで「介護業務」に従事する職種です。調理や清掃業務のみを行うスタッフは特定技能の対象外となります。そのため、外国人材を採用する際には、職務内容が介護業務に該当するかを確認することが重要です。

 

障害者総合支援法関連の施設

障害者総合支援法に基づく施設も、特定技能外国人の受け入れ対象となります。主な受け入れ施設は、以下の通りです。

 

  • 障害者支援施設
  • 共同生活援助(グループホーム)
  • 就労継続支援B型事業所

 

以上の事業所では、日常生活の支援や社会参加のサポートが行われており、介護職員によるケアの需要が高いのが特徴です。慢性的な人手不足が続く中で、特定技能人材の活用は、サービスの質の維持や利用者支援の継続に役立つと期待されています。

 

生活保護法関連の施設

生活保護法に基づいて運営される救護施設や更生施設も、受け入れ対象に含まれます。これらの施設は、生活困窮者などを支援する社会的セーフティーネットの一部であり、安定した人材確保が欠かせません。

ここでの食事や入浴の介助といった業務も「介護」と位置づけられています。特定技能人材を採用することで、安定した支援体制を維持し、利用者に必要なケアを継続的に提供できます。

 

受け入れ対象外の介護施設とサービス

特定技能「介護」は幅広い施設で活用できますが、すべての介護サービスが対象となるわけではありません。法律上、受け入れが認められていないものや、近年の見直しで条件付きで可能となったサービスもあります。

例えば、一部の居住型施設などは対象外となっています。これは、特定技能が「現場で直接介護業務を行うこと」を基本としているためです。対象外となる施設やサービスを正しく理解することは、誤った採用を防ぐだけでなく、今後の人材戦略を検討する上でも重要です。

 

訪問系介護サービス

訪問介護や訪問入浴などの訪問系サービスは、従来は特定技能の受け入れ対象外とされてきました。しかし、2025年4月から制度が改正され、一定の条件を満たす場合に限り、特定技能外国人も訪問介護に従事できるようになりました。

 

具体的には、主に以下の要件が求められます。

 

  • 介護事業所での1年以上の実務経験
  • 研修・同行訪問を経た上での配置
  • ご利用者やご家族への事前説明
  • 緊急時に連絡ができる体制を整える

 

依然としてハードルは高いですが、慢性的な人材不足が続く中で、訪問系サービスでも外国人材の活用が現実的な選択肢となりつつあります。

 

厚生労働省.「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」.令和7年版,2025.https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001496806.pdf,(参照 2025-9-20)

 

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、原則として特定技能外国人の受け入れ対象外です。その理由は施設の仕組みにあります。住宅型は「住まいの提供」が中心であり、入居者は外部の訪問介護事業者やデイサービス等と個別に契約してサービスを利用するのが一般的です。

そのため、施設そのものは「介護業務を直接提供する場」とは見なされません。特定技能の条件である「介護業務への従事」を満たさないため、採用先としては対象外となります。

 

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も、特定技能の受け入れ対象外です。サ高住では見守りや生活相談などが中心で、日常的な介護業務は外部の訪問介護事業者が提供するケースが多くなっています。

そのため、直接的に介護業務を行う施設とは位置づけられていません。今後規制が緩和される可能性はありますが、現行制度では対象外であることを理解しておきましょう。

 

特定技能外国人が従事できる介護の業務内容

特定技能「介護」で外国人が従事できるのは、あくまで介護業務です。

 

主な業務内容として、以下のようなものがあります。

 

  • 入浴・排泄・食事などの身体介護
  • レクリエーションの実施・補助
  • 機能訓練の補助
  • お知らせの掲示など

 

以上のように、身体介護から付随的な業務まで幅広く含まれます。一方で、事務作業や清掃、調理のみといった介護以外の業務は対象外です。

また、特定技能外国人は試験に合格した即戦力として位置づけられており、採用後すぐに人員配置基準に算定される点が大きなメリットといえるでしょう。安全管理を満たすことを前提に、夜勤を単独で担うことも可能であり、これは技能実習制度とは異なる点です。

こうした特徴は、慢性的な人材不足やシフト調整の課題を抱える施設にとって大きなメリットとなります。

 

特定技能外国人材「介護」の採用の流れと支援体制


特定技能外国人を受け入れる際には、採用の流れを正しく理解することが重要です。必要な試験や在留資格の取得、さらに協議会への加入といった段階を踏み、採用が可能になります。順序を整理しながら確認していきましょう。

 

採用の流れ

特定技能外国人の採用は、大きく分けて「試験合格 → 在留資格の取得 → 協議会加入」の流れで進みます。まず候補者が所定の試験に合格することが前提です。その後に、在留資格の認定や更新を行います。

また、受け入れ施設は在留資格認定証明書(COE)の申請前に「介護分野における特定技能協議会」へ加入している必要があります。これらの流れを理解した上で、計画的に準備を進めていきましょう。

 

介護技能評価試験と介護日本語評価試験

特定技能の在留資格を得るためには、候補者が即戦力として働ける能力を証明する試験に合格する必要があります。具体的には、以下の2つの試験です。

 

  1. 介護技能評価試験:介護の実務知識や技術が問われます
  2. 介護日本語評価試験:現場特有の専門用語や利用者とのやり取りに対応できる力を確認する試験です

 

以上の試験を通過することで、採用後に基礎から教育しなくても介護業務を一定水準で担えることが証明され、即戦力として現場に配置できます。また、介護分野の技能実習2号を良好に修了した人材については、これらの試験が免除される仕組みとなっています。

 

厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」.令和7年版,2025.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html,(参照 2025-9-20)

 

在留資格取得の手続き

試験合格後、候補者は「特定技能1号」の在留資格を取得する必要があります。申請には、雇用契約書や労働条件通知書などの提出が求められ、出入国在留管理庁の審査を経て在留資格が認定されます。

受け入れ施設側は、法令に沿った雇用契約を結び、在留資格の申請をサポートしなければなりません。この手続きを誤ると就労が認められないため、慎重に対応しましょう。

 

特定技能協議会への加入義務

特定技能外国人材を受け入れる介護施設は、在留資格認定証明書(COE)の交付を申請する前に「介護分野における特定技能協議会」へ加入することが法律で義務付けられています。この協議会は厚生労働省の委託を受けて公益社団法人国際厚生事業団が運営しており、制度の適正な運用や外国人材の保護が目的です。

 

具体的には、受け入れ施設が守るべきルールの周知や、外国人材からの相談対応、地域ごとの情報共有などを行っています。加入手続きはオンラインで行い、施設や雇用する外国人材の情報登録が必要です。この義務を怠ると、新たに特定技能外国人材を受け入れられなくなる可能性があります。したがって、採用プロセスの早い段階から手続きを進めておきましょう。

 

厚生労働省「(社)国際厚生事業団について」.令和7年版,2025.https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/jicwels_1.pdf,(参照 2025-9-20)

 

受け入れ施設に求められる支援体制

特定技能外国人材を雇用する施設には、採用手続きに加えて、日本で安定して働き生活できるよう支援体制を整えることが法律で義務付けられています。

これは、従来の外国人労働者受け入れ制度でみられた課題を踏まえ、人材の定着と活躍を目指して設けられたものです。それでは、それぞれについて詳しく解説いたします。

 

労働関係法令の遵守と社会保険の整備

特定技能外国人材を受け入れる施設には、労働基準法をはじめとする関係法令を遵守し、日本人職員と同様に社会保険へ加入させる義務があります。

特に重要なのが「同等以上の待遇」の原則であり、給与や福利厚生などの労働条件は、同じ業務に従事する日本人職員と同等かそれ以上でなければなりません。健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険への加入も必須であり、保険料は事業主が負担する必要があります。

外国人を安価な労働力として扱うのではなく、対等なチームの一員として迎え入れるという制度の基本理念を理解し、実行することが求められます。

 

外国人介護職員への生活支援の重要性

特定技能外国人を受け入れる施設には、現場での業務だけでなく、私生活にわたる幅広い支援を行うことが法律で義務付けられています。これは、生活基盤が安定してこそ、業務に集中できると考えられているためです。

出入国在留管理庁が定める法定支援として、以下の10項目が定められています。

 

  1. 事前ガイダンス:雇用契約や日本での生活について、本人が理解できる言語で情報提供すること。
  2. 出入国する際の送迎:日本に入国する際の空港への出迎え、帰国時の空港への送迎・同行を行うこと。
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援:アパートの連帯保証人になる、銀行口座開設や携帯電話契約を補助すること。
  4. 生活オリエンテーション:日本のルールやマナー、公共交通機関の利用方法、災害時の対応などを説明すること。
  5. 公的手続き等への同行:必要に応じて、市役所などでの各種手続きに同行すること。
  6. 日本語学習の機会の提供:地域の日本語教室を紹介するなど、日本語学習の機会を提供すること。
  7. 相談・苦情への対応:仕事や生活上の悩みについて、本人が理解できる言語で相談に乗り、必要な助言をすること。
  8. 日本人との交流促進:地域のお祭りやイベントなど、日本人と交流する機会をつくること。
  9. 転職支援:会社都合で解雇する場合、次の就職先を探す手伝いをすること。
  10. 定期的な面談の実施:支援責任者が、外国人本人と上司と定期的に(3か月に1回以上)面談を行うこと。

 

以上のサポートは、施設自らが行う場合もありますが、国が認定した「登録支援機関」に委託することも可能です。

いずれの方法であっても、これらの支援は外国人職員が安心して長く勤務し、能力を十分に発揮するために欠かせない取り組みです。

出入国在留管理庁.「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」.令和7年版,2025.https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/supportssw.html,(参照 2025-9-20)

 

特定技能外国人を受け入れた介護施設での成功事例


左:「ハートライフ千代田」施設長の岡尾さん 右:ナヴォダ ネトミニ ラジャパクシャさん(スリランカ/N3)

 

株式会社アクタガワ<ハートライフ千代田>施設長インタビュー

Q.外国人スタッフの方を受け入れてみてどうですか?

今回、初めてスリランカの方を受け入れたんですが、すごく真面目で 時間も守れますし、日本語も上手です。

はじめは心配だと思ったんですが、すぐに施設のスタッフとも、お客様とも馴染むことができました。

 

お客様からは「ミニちゃん」と呼ばれているそうです

 

 

 

特定技能「介護」でスリランカから入国したナヴォダさんへインタビュー

Q.日本での暮らしはどうですか?

施設を利用するお客様に「ミニちゃん」と呼ばれて嬉しいです。

お休みの日は、最近、同じ系列の施設で働くインドネシア人のスタッフと駿府城公園に行きました。

今度はディズニーランドに行ってみたいです。

 

Q.今後の目標を教えてください

介護福祉士の資格を取得して、日本で長く働きたいです!

 

まとめ:特定技能外国人の受け入れで介護施設が取り組むべきポイント


ここまで、受け入れ可能な施設種別・対象外サービス・従事できる業務、そして採用プロセスと支援体制の要件を整理しました。最後に、実務レベルで押さえるべき要点をまとめます。

 

まず「受け入れの可否」を確認する

施設が法律上の対象施設であるか、また任せる業務が「介護」に該当するかを明確にしましょう。訪問介護は条件付きで受け入れ可能になりましたが、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は原則として対象外です。こうした線引きを社内で共有しておくことが大切です。

 

即戦力としての活用設計を行う

特定技能人材は、試験に合格した「即戦力」として受け入れられます。身体介護から付随業務まで幅広く対応でき、配置基準への算定や条件付きでの単独夜勤も可能です。どのシフトやユニットで人手不足を補うのかをあらかじめ計画しておくと、効果を最大限に発揮できます。

 

採用の流れ「試験→在留→協議会」を時系列で管理

候補者の技能試験・日本語試験の確認、在留資格申請に必要な書類の整備、そして在留資格認定証明書(COE)申請前の特定技能協議会への加入。この3点をスケジュール化し、抜け漏れを防ぐことが重要です。審査の遅れは配属時期に影響するため、早めの準備を徹底しましょう。

 

同等以上の待遇と社会保険

賃金・労働時間・休暇・福利厚生は、日本人職員と同等以上であることが原則です。さらに、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険への加入も欠かせません。こうした法令遵守を「見える化」することは、外国人職員の安心だけでなく、既存職員の働きやすさ改善にもつながります。

 

10項目の生活支援で定着を実務的に担保

住居の確保、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行など、法定で定められた支援を実際の運用フローに落とし込みましょう。自施設で対応するのか、それとも登録支援機関に委託するのかは、費用と現場負担のバランスを踏まえて判断することが大切です。

 

◯チェックリスト

ここまでの内容を踏まえて、どこまで準備ができているかを確認してみましょう。以下の項目をチェックすれば、次に取り組むべき課題が見えてきます。

 

  • 対象施設と業務の受け入れ可否を法令ベースで確認したか
  • 配属とシフトの具体案(夜勤含む)を作成したか
  • 試験・在留・協議会のタイムラインを引いたか
  • 待遇と社会保険の運用を点検したか
  • 10項目の生活支援を設計したか(自前もしくは委託)

 

外国人の受け入れは、事前準備と運用設計が重要です。以上を踏まえ、効率的に人材を活用しつつ、介護の質を守る取り組みを進めていきましょう。

この記事が、早期離職やトラブルを避けつつ、介護施設で特定技能外国人を受け入れる際の参考になれば幸いです。

 

 

参考:技能試験・日本語試験免除対象者

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

 

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