特別養護老人ホーム(特養)の施設長とは?主な仕事内容と役割

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特養の施設長とは?アイキャッチ画像

 

「特養の施設長の年収はどのくらいなのだろう?」「施設長になるには、どんな資格や経験が必要なのだろう?」

介護のキャリアアップを考えたとき、このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

たとえば、現在特養で働いていて、さらに収入やキャリアを向上させるために施設長を目指したいものの、何から始めればよいのかわからない方。また、特養以外の介護施設で働いていて「特養は給与水準が高いと聞くけれど、施設長になるとどのくらいの年収になるのだろう」と気になっている方もいるでしょう。

さらに、介護業界以外で管理職として活躍しており、その経験を活かして介護施設の施設長への転職を検討している方もいるかもしれません。

この記事では、特別養護老人ホーム(特養)の施設長について、仕事内容や資格要件、年収相場、兼務に関するルール、施設長になるまでのキャリアパスをわかりやすく解説します。年収については、他の介護施設の施設長との比較も交えながら紹介します。

「施設長を目指したい」「今より年収をアップさせたい」「将来のキャリアの選択肢を広げたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

特養の施設長の役割とは?経営者・管理者としての2つの側面


特養(特別養護老人ホーム)の施設長は、施設全体の「最高責任者」です。その役割は、大きく「経営者」と「管理者」の2つに分けられます。

経営者としては、施設の収支管理や予算策定、行政対応など、施設全体の運営に関わる判断を担います。一方、管理者としての役割は、スタッフのマネジメントや入居者への介護サービスの質の維持・改善です。

特養は、社会福祉法人や地方自治体が運営主体となるケースが多く、公益性の高い運営姿勢が求められます。「現場を知りながら経営もできる人材」が、特養の施設長には求められています。

 

特養の施設長の仕事内容

施設長の具体的な仕事内容は、以下の4つのカテゴリに分類できます。

業務カテゴリ 具体的な内容
収支管理・予算策定 年間予算の策定、収支状況の把握と改善、介護報酬の請求管理、行政への各種届出・報告
労務管理・人材育成 職員の採用・面接・配置、シフト・勤怠管理、研修の企画・実施、職場環境の改善による定着率向上
コンプライアンス遵守・行政対応 法令・運営基準の遵守、実地指導(都道府県・市町村による現地調査)への備えと対応、各種記録・書類の管理
地域連携・家族対応 入退所時の家族との面談・説明、地域包括支援センター・医療機関との連携、地域行事・ボランティアの受け入れ対応

 

施設の規模によって、業務の担い方は異なります。大規模施設では、副施設長や事務長と役割分担するケースが多いです。一方、小規模施設では施設長自身が、介護業務や生活相談員業務を兼務することも少なくありません。

現在、現場で主任や生活相談員を担っている方は、施設長業務の一部をすでに経験しているともいえます。日々の業務の積み重ねが、施設長としての土台になります。

 

特養の施設長になるための資格要件


特養 施設長

 

特養の施設長には「老人福祉法」および「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」によって、資格要件が定められています。

有料老人ホームなど資格要件がない施設とは異なり、特養は公的施設として厳格な基準が設けられているのが特徴です。

具体的には以下の3つの要件があり、いずれか1つを満たせば施設長として認められます。

 

厚生労働省が定める基本要件3つ

 

社会福祉主事の資格要件を満たす者

社会福祉主事は「任用資格」であり、特定の国家試験に合格するものではありません。主な取得方法は、大学・短期大学等で厚生労働大臣指定の社会福祉に関する科目を修了すること、または厚生労働大臣指定の養成機関を修了することです(社会福祉法第19条)。

なお、介護福祉士や社会福祉士などの国家資格保有者は、この要件を満たすとみなされる場合があります。

 

社会福祉事業に2年以上従事した経験を持つ者

「社会福祉事業」とは、社会福祉法第2条に定める第一種・第二種社会福祉事業を指します。特養・老健・グループホームなど、介護保険施設での実務経験が該当します。

3つの要件の中で、介護現場出身者が最も満たしやすい要件です。すでに2年以上、特養などの介護保険施設で働いている方は、この要件をクリアしている可能性が高いです。

 

社会福祉施設長資格認定講習会(中央福祉学院)を修了した者

全国社会福祉協議会の中央福祉学院が実施する講習で、通信学習(4学期・6ヶ月)とスクーリング(面接授業・5日間)で構成されています。経営管理・人事労務管理・財務管理など、施設長業務に必要な知識を体系的に学べます。

②の実務経験要件を満たしていない方や、異業種からの転職者が活用するケースが多い要件です。

厚生労働省.「特別養護老人ホームの施設長及び管理者の資格要件」.https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/02/s0223-8d18.html(参照 2025-06-16)

 

「資格」と「要件」の混同に注意

医師・看護師・介護福祉士・社会福祉士などの国家資格は、特養施設長の必須条件ではありません。①〜③のいずれかを満たしていれば、国家資格がなくても施設長になれます。

「社会福祉士でなければ施設長になれない」という誤解を持つ方もいますが、これは正確ではありません。ただし、国家資格を保有していると、以下の点で有利になります。

  • 現場職員からの信頼・専門性の裏付けとなる
  • 資格手当が上乗せされ、年収アップにつながるケースがある
  • 転職市場での競争力が高まる

 

「要件」は施設長に就任するための条件であり「資格」はキャリアをより有利に進めるためのものです。まずは、ご自分が要件を満たしているかどうかを確認しましょう。

 

特養の施設長の年収・給与相場


給与明細 画像

 

特養の施設長の年収は、他の介護施設の管理者と比べてどのくらいなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

 

ここでは、公的なデータをもとに、特養の施設長の平均年収の目安、他施設との年収比較、そして年収をアップするための方法について詳しく紹介します。

 

平均年収の目安

公益財団法人介護労働安定センターの「令和4年度 介護労働実態調査」によると、特養(介護老人福祉施設)の施設長(管理者)の平均年収は6,571,713円です。

また、勤続年数が長くなるほど年収は上昇する傾向があります。

 

勤続年数 平均年収
2年以上3年未満 約467万円
5年以上10年未満 約495万円
15年以上20年未満 約556万円
20年以上 約661万円

 

「2年以上3年未満」と「20年以上」では、約200万円近くの差があります。施設での経験を積み重ねることが、年収アップに直結していることがわかります。

公益財団法人介護労働安定センター.「令和4年度 介護労働実態調査 事業所調査結果報告書(資料編p.148,149)」.2023年. https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf/(参照 2025-06-15)

 

 

他の介護施設の施設長との年収比較

施設長の年収は、勤務する施設の種類によって大きく異なります。以下の表は、主な介護施設の施設長年収をまとめたものです。

それでは、一緒にみていきましょう。

 

施設種別 平均年収 特徴・傾向
介護老人保健施設(老健) 約1,208万円 原則、医師が施設長。医師の給与水準が、平均を大きく引き上げている点に注意しましょう。
特別養護老人ホーム(特養) 約657万円 大規模法人が多く、給与水準・賞与ともに安定している傾向です。
特定施設入居者生活介護
(有料老人ホーム等)
約583万円 民間企業の参入が多く、施設規模や成果によって給与幅が広いのが特徴です。
通所介護(デイサービス) 約489万円 小〜中規模事業所が多い傾向にあります。
訪問介護事業所 約441万円 小規模事業所が多い傾向。サービス提供責任者を兼務する場合もあります。
認知症対応型共同生活介護
(グループホーム)
約434万円 小規模・地域密着型の施設が多く、施設長が現場業務を兼務するケースも多いです。

 

老健の年収が突出して高い理由は、介護保険法の規定により原則として医師が施設長を務めるためです。特養の年収は、有料老人ホームやデイサービス、グループホームと比べると高い水準にあります。

特養の給与が比較的安定している背景には、社会福祉法人・地方自治体による運営が多く、給与体系や賞与が安定しやすいことが挙げられます。

公益財団法人介護労働安定センター.「令和4年度 介護労働実態調査 事業所調査結果報告書(資料編p.148)」.2023年. https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf/(参照 2025-06-15)

 

特養で年収をアップするためには?

 

ここでは特養で年収をアップするための方法を4つ紹介します。

 

具体的には、以下の4つです。

 

  1. 勤続年数を重ねる。
  2. 施設規模の大きい施設を選ぶ。
  3. 運営法人の種別を確認する。
  4. 資格取得で手当を増やす。

 

それでは順番に解説していきます。

① 勤続年数を重ねる(最も確実な方法)

前章のデータが示すように、勤続年数が長いほど年収は上昇します。勤続20年以上の平均年収は約661万円であり、2年以上3年未満(約467万円)と比べると約200万円の差があります。同じ法人で実績と信頼を積み上げることは、着実な年収アップの方法と言えるでしょう。

施設長の業務は、収支管理や人材育成など、経験を積むほど判断の精度が高まっていく傾向にあります。年数を重ねるごとにマネジメントの幅が広がり、それが評価や待遇にも反映されやすくなります。

 

② 施設規模の大きい施設を選ぶ

施設規模の大きい施設ほど、施設長の給与水準が高い傾向があります。転職を検討する際は、定員数や施設規模も確認するとよいでしょう。

ただし「大規模施設が必ずしも自分に合っている」とは限らないので、注意が必要です。グループホームや小規模多機能型居宅介護のような小規模施設では、一人ひとりのスタッフや利用者に深く関わりやすいという良さもあります。

年収の高さだけでなく「自分が働きやすく、力を発揮できる環境かどうか」も、職場選びの大切な軸となることを理解しておきましょう。

 

③ 運営法人の種別を確認する

社会福祉法人・地方自治体が運営する施設は、給与体系が安定しており賞与も出やすい傾向があります。一方、民間企業が運営する施設では成果主義的な評価制度を取り入れているケースもあり、実績次第で高収入も目指せます。

転職活動の際は、求人情報に記載されている運営法人の種別にも目を通してみるとよいです。同じ「特養の施設長」という職種でも、法人によって給与の仕組みや評価のされ方が異なることを押さえておきましょう。

 

④ 資格取得で手当を増やす

資料編p.149によると、社会福祉士を保有する施設長の平均年収は約577万円です。資格手当が上乗せされるケースも多く、保有資格が年収に影響する傾向にあります。

すでに介護現場で働いている方であれば、実務経験を活かしながら資格取得を目指せます。働きながら計画的に学習を進め、資格手当という形で収入に反映させていくのも、年収アップの一つの方法です。

公益財団法人介護労働安定センター.「令和4年度 介護労働実態調査 事業所調査結果報告書(資料編p.149)」.2023年. https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf/(参照 2025-06-15)

 

施設長の兼務に関するルールと注意点


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特養の施設長は、一定の条件のもとで他の事業所の管理者を兼務できます。

最も一般的なケースは、特養と同一敷地内のショートステイ(短期入所生活介護)の管理者を兼務する形です。また、同条件でデイサービス(通所介護)の管理者との兼務が認められるケースもあります。

なお、兼務を行うには「管理上支障がない」と行政に認められる必要があります。

 

兼務のメリット

兼務には、法人側にとっての人件費効率化というメリットがあります。施設長にとっても、役職手当・職務手当の増加による収入アップの可能性があります。

 

兼務の注意点・制限

一方で、兼務にはいくつかの制限と注意点があります。

まず、施設長自身の負担が増える点です。兼務すれば、それぞれの部署を管理するための時間が分散し、現場の状況を十分に見切れなくなることがあります。

各事業所に頼れる主任や現場リーダーがいれば業務を分担できますが、そうした人材が不在の場合、施設長にかかる負担はかなり大きいです。

また、実際の現場では、兼務条件の解釈をめぐって監査で指導を受けるケースもあります。事前に所管の都道府県・市町村に確認することが重要です。

 

特養の施設長を目指すためのキャリアパス


 

 

特養の施設長を目指すルートは、大きく2つあります。具体的には、

  1. 介護現場からのキャリアアップ
  2. 異業種からの転職

どちらのルートも、第2章で解説した3つの資格要件のうち1つを満たしていることが前提です。

 

現場からキャリアアップをするルート

 

介護現場からのキャリアアップが、特養施設長への最も一般的なルートです。以下に、代表的な例を挙げます。

 

キャリアの流れ

介護職員(3〜5年)→ 主任・リーダー(2〜3年)→ 生活相談員またはケアマネジャー(3〜5年)→ 副施設長・施設長候補(1〜3年)→ 施設長

 

各ステップについて、詳しく見ていきましょう。

 

介護職員 → 主任・リーダー

現場での実務経験を積みながら、後輩指導やシフト管理などマネジメントの基礎を身につけるステップです。

 

主任 → 生活相談員

入退所対応・家族相談など、施設運営の入り口となる経験を積みます。社会福祉主事の資格要件を満たしやすいポジションでもあります。

 

生活相談員 → 施設長候補

施設運営全体への関わりが深まり、法人から施設長候補として育成されるケースが多いステップです。

 

ケアマネジャー→ 施設長候補

介護支援専門員として利用者管理・地域連携を経験し、マネジメントスキルを磨きます。

 

このルートに共通しているのは、その時々の仕事に真剣に向き合うことで、スタッフや利用者からの信頼が自然と積み重なり、それが次のキャリアにつながる点です。

施設長という立場は、日々の積み重ねの延長線上にあります。目の前の仕事と毎日コツコツ誠実に向き合う姿勢こそが、施設長への道を切り開いていくと言えるでしょう。

 

異業種(マネジメント層)から転職をするルート

他業界での経営・管理職経験(営業部長・店長・施設管理職など)を活かして介護業界に転職し、施設長として着任するケースもあります。

◯キャリアの流れ
社会福祉施設長資格認定講習会(中央福祉学院)を受講・修了 → 特養での採用活動 → 施設長または施設長候補として着任

 

または、まず副管理職・事務長として入職し、施設運営を学んだうえで施設長に昇進するケースも見られます。

 

異業種出身者が評価される主なポイント

  • 経営・財務管理のスキル(予算策定・収支管理)
  • 組織マネジメント・人材育成の実績
  • 行政・取引先との折衝・交渉経験

 

課題と対策

介護保険制度の知識や現場のケアに関する理解は、入職後に習得が必要です。OJTや外部研修を積極的に活用しながら知識を補う必要があります。

近年、人材不足が深刻な介護業界では、異業種マネジメント経験者の採用に積極的な法人も増えており、介護未経験でも施設長ポジションへの転職事例が出てきています。

 

まとめ


 

この記事では、特養の施設長について以下の内容を解説しました。以下に、ポイントをまとめます。

  • 役割:経営者・管理者の2つの側面を持つ施設の最高責任者
  • 資格要件:①社会福祉主事の要件を満たす、②社会福祉事業に2年以上従事した経験、③社会福祉施設長資格認定講習会の修了
    ※以上のいずれか1つを満たせばよく、介護福祉士・社会福祉士などの国家資格は必須ではない
  • 年収:平均約657万円で、他の介護施設の管理者と比べても高水準。勤続年数・施設規模・法人種別によって変動する
  • 兼務:同一敷地内の他サービスとの兼務は条件付きで可能だが、業務負担が大きくなる傾向にある。所管の自治体への事前確認が必須。
  • キャリアパス:介護現場からのステップアップルートと、異業種マネジメント経験者からの転職ルートの2つが存在する

 

特養の施設長には、介護の知識や経験だけでなく、収支管理や人材育成などの「経営・マネジメントの視点」も必要です。日々の業務に取り組みながら、こうしたスキルや考え方を少しずつ身につけていくことが、施設長へのステップにつながります。

また、資格要件や兼務に関するルールを正しく理解しておくことは、自分自身のキャリアプランを具体的に考えるうえでも、施設運営を目指すうえでも役立ちます。「いつかは施設長として活躍したい」と考えている方は、まずご自身が要件を満たしているかを確認してみてはいかがでしょうか。

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