デイサービスとデイケアの違いを解説。目的や費用、サービス内容、選び方について詳しく説明します。
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デイサービスとデイケアの基本概要
デイサービスやデイケアは、自宅に暮らす要介護高齢者が通って利用する介護サービスです。両方とも同じだと誤解されることも多いですが、実はそれぞれ目的やサービスの内容、特徴は異なります。
デイサービスとは
デイサービス(通所介護)は、自宅に暮らす要介護高齢者が、これからも可能な限り自立した日常生活を送れるように、食事や入浴などの支援や機能訓練、口腔機能向上のための支援などが日帰りで受けられるサービスです。
利用できるのは、要介護1~5の認定を受けた方であり、介護認定を受けていない方は利用することができません。
介護保険法におけるデイサービス(通所介護)には、一般的な「通所介護」、認知症の方の支援を得意とする「認知症対応型通所介護」、医療面での支援が特に必要とされる方のための「療養通所介護」があります。
事業形態等にもよりますが、一般的な通所介護では1回あたり5時間~7時間、もしくは7時間~9時間でサービスを提供している事業所が多く、朝から夕方まで利用される方が多いです。
要介護状態になると、体を動かすことが難しくなったり、不安になったりすることで、外出や友人等との交流の機会は減りやすいでしょう。こうしたひきこもりの状態は、要介護状態を悪化させる要因につながります。デイサービスに通うことで、ひきこもりの解消や他者とのコミュニケーションの機会となり、介護予防につながるという目的があります。
また、日中の介護の肩代わりとなることで、日頃介護をしている家族の負担を軽減し、家族とともに無理なく自宅で暮らせるようサポートする役割もあります。
デイケアとは
デイケア(通所リハビリテーション)は、自宅に暮らす要介護高齢者が、これからも可能な限り自立した日常生活を送れるように、主治医の指示のもとリハビリを行い、食事や入浴などの支援や機能訓練、口腔機能向上のための支援などが日帰りで受けられるサービスです。
通所介護に比べると、リハビリが中心となる介護サービスで、身体機能の維持や回復、日常生活の回復、認知機能の改善などに向けた訓練を行います。
利用対象者は要支援1~2、要介護1~5の認定を受け、医師から専門的なリハビリの必要性があると判断された方です。サービスの特性上、医療機関や介護老人保健施設で運営されている場合が多いです。
理学療法士などのリハビリ専門職が配置されており、専門的な器具を用いたリハビリや運動機能向上のためのプログラム実施、口腔機能の向上、栄養改善などが主なサービス内容となっています。
また、医師が配置されているため、医学的な管理が必要な方も通いやすいサービスであり、医療と介護の両面からサポートを受けることができます。
デイサービスとデイケアの大きな違い
デイサービスとデイケアは何が違うのか、分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、利用目的やサービス内容、人員体制、費用の面から比較してみましょう。
利用目的の違い
デイサービスとデイケアの大きな違いは、利用目的にあります。
利用目的 | |
デイサービス | 日常生活の支援を受けながらひきこもりの防止、レクリエーション、 生活の場で行える範囲のリハビリを行う |
デイケア | 医師の指示のもと身体機能や認知機能回復のための専門的なリハビリを行う |
デイサービスの場合、介護が必要な方のひきこもりを防止して、日中を活動的に過ごしたり、人との交流を図りながら自宅での可能な限り自立した生活をサポートしてもらうことが主な利用目的となります。
身体機能を維持するための機能訓練も受けることができますが、あくまでも生活の中でできる運動や体操がメインであり、リハビリ専門職による個別的な訓練等は含まれていません。
一方、デイケアは、医師の指示のもと専門的なリハビリが受けられる点が特徴です。専門職によるマンツーマンの個別リハビリテーションメニューもあります。さまざまな器具やマシンを使ったリハビリや、集団で行うリハビリなど、バリエーションも豊富です。
サービス内容の違い
次に、具体的なサービス内容の違いについて見てみましょう。
サービス内容 | |
デイサービス | 食事、入浴、排泄などの生活支援が主となる |
デイケア | リハビリや健康管理が主となる |
デイサービスの場合、食事や入浴などの生活の支援が主なサービス内容となります。専門的なリハビリはありませんが、暮らしの中でできる運動や機能訓練を上手に取り入れて、できるだけ自然な形で介護予防ができるよう取り組んでいるところも多いです。
また、季節に沿った行事や豊富なレクリエーションなどを通じて、利用者がひきこもりにならないように、飽きずに通い続けることができるような取り組みが行われています。
「人と交流しながらできるだけ身体機能を維持したい」「日中を活動的に過ごして生活リズムを整えたい」などの目的で利用される方も多いです。
一方、デイケアはリハビリや健康管理がメインの介護サービスです。もちろん、食事や入浴、排泄などの介護も受けることができます。デイサービスほどレクリエーション等が充実していないかもしれませんが、そのぶんリハビリメニューは豊富です。
「家の中での歩行を安定させたい」「自分でトイレに座って排泄したい」など、デイケアに通う利用者は具体的な目標をもち、専門職によるリハビリと介護職による生活の中でできるリハビリを受けることができます。
人員体制の違い
デイサービスとデイケアの人員体制について見てみましょう。
人員体制 | |
デイサービス | ・介護職員 ・看護職員 ・機能訓練指導員 ・生活相談員 |
デイケア | ・医師 ・介護職員 ・看護職員 ・リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等) ・支援相談員 |
デイサービスの人員配置と、デイケアの人員配置の大きな違いは、医師やリハビリ専門職といった医療職の有無と言えるでしょう。
デイサービスでは、介護職員が中心となって利用者の支援にあたります。一方、デイケアは医師が常駐しているため、健康上の不安がある方も通いやすくなっています。
デイケアに配置されるリハビリ専門職は、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などですが、全ての専門職が揃っているとは限りません。事業所によって、在籍する専門職の種類は異なります。
費用面の違い
デイサービスやデイケアの費用は、事業所の規模やサービスの利用時間、加算などによって変わってきます。また、食事代やおむつ代は別途負担することとなる点に注意が必要です。
基本的に、デイサービスよりもデイケアの方が介護サービスの単価は高めに設定されています。これは、デイケアには医師やリハビリ専門職の配置があることや、リハビリ施設が整っていることなどが関係しています。
デイサービスとデイケアの費用
デイサービスとデイケアの費用について、もう少し詳しく見ていきましょう。介護保険の自己負担額は、1~3割となっており、個人の収入額等によって負担割合は異なります。ここでは、1割負担額の金額を記載していますが、2割負担や3割負担の方は自己負担額が増えることに注意が必要です。
デイサービスの費用内訳
まずは、デイサービス(通常規模・7時間以上8時間未満)の1回あたりの利用料について見てみましょう。
1回あたりの利用者負担(1割負担額) | |
要介護1 | 655円 |
要介護2 | 773円 |
要介護3 | 896円 |
要介護4 | 1,018円 |
要介護5 | 1,142円 |
この金額には、送迎の費用も含まれていますが、おむつ代や食事代については別途必要になります。食事代は事業所によって異なりますが、おおよそ600円~700円程度で提供しているところが多いです。その他、各種加算もありますが、必要なサポート内容によって異なるため、詳しくは担当者に確認しましょう。
デイケアの費用内訳
次に、デイケア (通常規模・6時間以上7時間未満)の1回あたりの利用料を見てみましょう。
1回あたりの利用者負担(1割負担額) | |
要介護1 | 710円 |
要介護2 | 844円 |
要介護3 | 974円 |
要介護4 | 1,129円 |
要介護5 | 1,281円 |
なお、デイケアは要支援1・2の方も利用することができます。自己負担額は、要介護の人とは違い、月単位での定額となります。
月額(1割負担の場合) | |
要支援1 | 2,053円 |
要支援2 | 3,999円 |
デイケアも、デイサービスと同様に送迎の費用が含まれています。おむつ代や食事代は別途負担が必要で、デイサービスと同様におおよそ600円~700円程度の食事代が利用回数分かかってきます。
デイサービスとデイケアのメリットとデメリット
デイサービスとデイケアとでは、それぞれ特徴やサービス内容、目的が異なるため、メリットやデメリットも違ってきます。大事なのは、メリットやデメリットを踏まえて、より利用者自身に合うサービスを選ぶことではないでしょうか。よりイメージしやすいように、それぞれのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
デイサービスのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・事業所数が多く選択肢が豊富 ・デイケアよりも経済的な負担が少ない ・高齢者の体に合ったバランスの良い食事が提供される ・介護の専門職による食事や入浴、排泄などの介助が受けられる ・レクリエーションや行事のバリエーションが豊富な場合が多い ・空きがあればスムーズに利用しやすい | ・医療面でのサポートを多く必要とする方の利用が難しい ・要支援の方は対象外 ・専門的なリハビリは受けにくい ・リハビリ機器や設備が充実していないことが多い |
デイケアの事業所に比べると、デイサービス事業所の数は多く、それぞれが独自の工夫や強みを持っているため、利用者は事業所の雰囲気やサービスの内容、特色をみて自分に合ったところを選びやすいでしょう。
また、四季折々の伝統的な行事など、レクリエーションに力を入れている事業所も多いため、季節の移り変わりを楽しんだり昔を懐かしんだりしながら楽しいひとときを過ごすことができます。
デイケアの利用には医師の指示書等の書類の準備で時間がかかることもありますが、デイサービスの場合は空きがあればスムーズに利用しやすい点もメリットです。
一方、医師やリハビリ専門職の配置がないため、医学的な管理の必要度が高い人や医療処置を必要とする人などは受け入れが難しいと判断されることもあります。しっかりリハビリをしたいなど、機能訓練を目的とする人にとっては、設備面やスタッフのサポート体制にデメリットを感じるかもしれません。
デイケアのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・医療面でのサポートが必要な方も利用しやすい ・リハビリ専門職による専門的なリハビリが受けられる ・要支援の人も利用可能 ・短時間利用に対応してくれる事業所が多い | ・事業所の数が少なめで選択肢があまりない ・デイサービスに比べると費用が高い ・利用までに時間がかかることもある ・行事やレクリエーションのバリエーションが少ないところもある |
デイケアは、医学的な管理が必要な方も安心してリハビリが受けられるような体制が整っている点が大きなメリットです。それぞれの身体状況に応じた専門的なリハビリが受けられるため、怪我や病気等によって体を動かすことが難しくなり、生活に支障を来している人が希望をもって前向きに訓練しやすい場所とも言えるでしょう。
デイケアの場合、1時間~2時間程度の短時間利用に対応している事業所も珍しくありません。入浴や食事のサービスまでは必要なくても、集中的なリハビリを受けたいという方に便利です。必要に応じて、必要なだけサービスを利用しやすいため、短時間のデイケアを利用しつつ他の日はデイサービスを利用する、といった方法で自宅での暮らしを継続する方もいます。
デイケアの事業所数はデイサービスに比べると少ないため、地域によっては選択肢がほとんどない、あるいは少ないといった状況も珍しくありません。雰囲気やサービスの内容、質に満足がいかなかった場合、デメリットに感じやすいポイントでしょう。
また、利用には医師の指示書を要するため、空きがあっても利用開始までには時間がかかる可能性があります。
デイサービスとデイケアの選び方
デイサービスとデイケアにはそれぞれメリット・デメリットがあり、何を求めたいかによっても適したサービスが変わってきます。実際に利用してみないと分からない部分もありますが、これからサービスの利用を検討する人はできるだけ自分に合ったサービスを選びたいと考えるでしょう。ここからは、デイサービスやデイケアの特徴を踏まえ、どんな人におすすめなのか解説していきます。
デイサービスがおすすめな人
デイサービスは、特に以下に当てはまる人におすすめです。
- 他者と交流する時間を楽しみたい人
- 日中を活動的に過ごして規則的な生活を送りたい人
- 自宅での入浴や排泄が難しい人
- 家族の介護負担を減らしたい人
- できるだけ身体機能を維持したい人
デイサービスでは、家で過ごす代わりの場として、レクリエーションや他者との交流を楽しみながら過ごすことができます。ケアに当たるスタッフは介護の専門家であり、入浴など自宅で行うことが難しい動作も、安心してサポートを受けながら行えます。
基本的に、デイサービスは朝から夕方まで比較的長い時間利用する人が多いです。自宅で家族が介護を担っている場合は、家族の休息時間の確保にもつながり、介護疲れを起こさないようにしたいと考える人にも良いでしょう。
デイケアがおすすめな人
以下に当てはまる人は、特にデイケアの利用がおすすめです。
- 医療のサポートを受けながらリハビリを行いたい人
- 怪我や病気からの回復期であり専門的なリハビリを受けたい人
- 退院後の生活に不安がある人
- 医師の判断を得ながらリハビリする必要がある人
デイケアには、退院後まもない方も多く利用されています。怪我や病気の後遺症、治療による寝たきり状態で身体の状況が変わった人、医療のサポートを受けながらリハビリをしたい人など、医学的な管理のもと体を動かして改善したい方におすすめです。
デイケアは、長期的に利用される方も多い一方で、目標を定めて集中的に短期間で改善を目指す方もいます。退院後しばらくはデイケアでリハビリを受けながら自宅生活を送り、体の動きが改善したなどの成果があればその後はデイサービスに移行する、といった使い方も良いでしょう。
人によっては、曜日によってデイケアとデイサービスを使い分け、デイケアの日にはリハビリを頑張りつつ、デイサービスの日は他の利用者との交流を楽しむのもおすすめです。
怪我や後遺症、障害の内容によって、適切なリハビリは異なります。立つ・歩く・座るなどの動作の改善を目的とするなら理学療法士のいるデイケアが合いやすいでしょう。飲み込みの改善や会話の改善を目的にする場合は、言語聴覚士のいるデイケアを選ぶなど、所属している専門職の種類からデイケアを選ぶと、より専門的なリハビリを受けやすくなります。
デイサービス・デイケアへの促し方
親御さんなどが要介護状態になった時、デイサービスやデイケアの利用をして欲しいと願うご家族はとても多いです。しかし、本人の意向によっては「行きたくない」と拒否されてしまい、困っている方も多いです。
ご本人のためを想ってデイサービスやデイケアを勧めても、「行きたくない」の一点張りだといずれご家族の負担も大きくなり、不安になりますよね。デイサービスやデイケアに消極的な方に対して、どのような促し方ができるのかもチェックしてみましょう。
認知症の方への説得の仕方
認知症になると、状況を理解し判断することに支障が出てくるため、言葉でいくら説得しようと思っても難しいかもしれません。一度はデイサービスやデイケアに積極的になったとしても、また次の日には忘れてしまい、堂々巡りになることもあります。
デイサービスには、認知症の診断を受けた人だけが利用できる「認知症対応型通所介護」もあります。スタッフは認知症のケアに精通しており、小規模でアットホームな雰囲気が魅力です。状況の理解や判断が難しくなる認知症の人にとって、大人数で騒がしい場所よりも安心しやすく、落ち着いて過ごしやすい環境が考えられています。
通所サービスの利用を拒む認知症の方には、言葉で説得できないことも多いため、認知症対応型のデイサービスに相談をして、どのような誘い出しが良いのか相談してみてはいかがでしょうか。もちろん、担当のケアマネジャーさんに相談をして、ご本人が「行ってみたい」と思えるような誘い出しを一緒に考えるのもおすすめです。
両親への説得の仕方
ご両親に限らず、デイサービスやデイケアの利用を嫌がる人は珍しくありません。特に、これまで利用したことがない人にとって、新たな環境に身を置くのはとても不安なことです。
また、ご高齢の方は、今の若い人とは違う価値観を持っていることも多いです。昔は、まだ介護サービスが当たり前のように活用されてきたとは言いにくい面もあり、あまり良いイメージを持っていない可能性もあります。
通所介護についてネガティブなイメージを持っている方には、今は介護サービスを利用しながら暮らすことが当たり前の世の中であることや、介護サービスを上手に利用して生き生きと暮らす人が多いことを伝えてあげましょう。そして、不安に耳を傾けながら、ご家族の想いも優しい気持ちで伝えてみてはいかがでしょうか。
説得をする上で大切なのは、とにかく行かせることに躍起にならないことです。こうした姿勢が全面に出ると、余計に反感を買ってしまう恐れがあります。「あなたの暮らしを楽にするため」「あなたにとって良いことがいっぱいある」という視点で勧めてあげると、少しずつ考え方が変わるかもしれません。
これまで介護サービスを使ったことがない場合は、まずは訪問系のサービスから始めてみて、家族以外の人が介護に携わることに慣れるのも良いでしょう。スタッフとの信頼関係ができたら、代わりにデイサービスを勧めてもらう、主治医にお願いして勧めてもらうのも1つの方法です。
デイサービスとデイケアの併用方法
デイサービスとデイケアは、それぞれの特徴を踏まえて上手に使い分けると良いでしょう。効果的な併用の仕方の例をご紹介します。
デイケアからデイサービスへの移行
デイケアで目標を定めて集中的にリハビリをし、満足できる結果が得られたら、デイサービスに切り替えるのもおすすめです。デイサービスでは、デイケアで学んだことを活かしながら、できるだけベストな状態が維持できるよう注意して、ひきこもりを防止しながら楽しい時間を確保しましょう。もし、怪我や病気などでまた状態が変化したら、デイケアでリハビリをするなど、臨機応変にサービスを活用するつもりで進めてみてはいかがでしょうか。
デイサービスとデイケアの同時利用
デイサービスとデイケアを同時に利用することも可能です。ケアマネジャーさんに相談をして、それぞれどんな目的で利用するのか明確にし、サービスを組んでもらいましょう。デイケアはリハビリだけ数時間利用して、その他の曜日にデイサービスで入浴等を行うといった使い方もおすすめです。
まとめ
デイサービスとデイケアは、似ているようで違う点も多いことが分かりましたね。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが合っているのかは人によって異なります。通所系のサービスの利用希望があっても、何を選んで良いのか分からない時は、ケアマネジャー等の専門職にアドバイスをもらいながら決めていきましょう。