
2025年度(第38回)介護福祉士国家試験から、「パート合格(科目別合格)」制度が導入されました。
従来は試験の一部科目で基準を下回ると全科目の再受験が必要でしたが、制度改正により段階的な合格が可能となります。特に、特定技能1号で来日している外国人介護人材と受け入れ先の事業所にとって、この制度はとても有用なものといえるでしょう。
特定技能介護人材にとって、国家試験の合格は大きな分岐点です。特定技能2号への移行や、在留資格「介護」への変更を目指すうえで、国家資格の取得は長期的な就労・定着につながる重要なステップとなります。
本記事では、外国人介護人材の介護福祉士国家試験合格率の他、受験に関連する在留期間延長の特例措置についても解説します。
外国人介護人材の合格率の現状から制度改正のポイント、育成設計の考え方まで掲載していますので、参考にしてみてください。
Contents
外国人介護人材の介護福祉士国家試験合格率の現状
第37回介護福祉士国家試験合格率
| 区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 全体(日本人含む) | 75,387人 | 58,992人 | 78.3% |
| 特定技能1号 | 4,932人 | 1,643人 | 33.3% |
| 技能実習 | 155人 | 50人 | 32.3% |
介護福祉士国家試験の合格率は、日本人を含む全体では近年70~75%前後で推移しています。
一方、外国人受験者に限ると、年度差はあるものの概ね30%~50%前後と、全体平均より低い傾向があります。
制度設計や日本語教育体制の違いが結果に反映されていると考えられます。
参考:介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/001457250.pdf
外国人介護人材の介護福祉士国家試験合格は難しい?
結論として、日本語を母語としない外国人にとって、介護福祉士国家試験の難易度は高いと言えます。
試験はすべて日本語で実施され、五肢択一のマークシート方式で出題されます。
長文の事例問題が多く、医療・福祉専門用語や抽象的な概念が含まれるため、単なる知識量だけでなく、高い読解力が求められます。
特に難易度を上げていると思われる要素を下記にまとめました。
- 医療・福祉専門用語の理解
- 漢字の読み書き
- 長文事例問題の読解力
- 倫理・尊厳・自己決定などの抽象概念の理解
- 選択肢を比較検討する判断力
倫理・尊厳・自己決定といった抽象概念は、日本人受験者にとっても難しい分野です。
母国の家族観や福祉観との違いにより理解に時間を要する場合もありますが、合格率の差は文化だけでなく、日本語力や学習環境の影響が大きいと考えられます。
国家試験は実務力の確認だけでなく、日本語で理論を理解できるかを問う試験でもあります。
外国人の合格率が低い理由
外国人介護人材の合格率が全体平均より低い背景には、個人の能力というより「受け入れ体制の差」が大きく影響しています。
① 日本語力と専門用語理解の不足
介護福祉士国家試験では、日常会話レベルを超えた専門的な日本語理解が求められます。
特にN2相当以上の読解力がない場合、長文事例問題で日本語理解が追いつかず失点しやすくなります。
来日前・来日後の日本語教育の質が合否に直結するといえるでしょう。
② 勤務優先の環境による学習時間不足
多くの施設では人手不足が深刻であり、外国人職員も即戦力として配置されます。その結果、「試験対策の時間が確保できない」「勤務後の自主学習に依存している」「体系的な指導がない」といった状況が生まれやすくなります。
働きながら受かるだろうという前提は、現実的ではありません。
③ 支援機関・受け入れ機関のサポート体制の差
同じ外国人でも、支援体制によって合格率は大きく変わります。
支援機関と契約する際、以下の項目を確認すると良いでしょう。
- 定期的な試験対策講座があるか
- 日本語補習があるか
- 模試の実施があるか
- 進捗管理を行っているか
支援が形骸化している場合、合格率は伸び悩みます。
④ 制度理解の不足
介護保険制度や日本独自の福祉理念は、自国に類似制度がない場合、イメージしにくい分野です。単なる暗記ではなく、背景理解まで支援しているかどうかが差になります。
国家試験の合否は、本人の努力だけで決まるものではありません。
日本語教育や学習時間の確保、継続的な試験対策など、受け入れ側の体制づくりが結果に大きく影響します。
採用時点から資格取得までを見据えた支援設計を行うことが、安定的な人材確保に繋がります。
特定技能「介護」で来日した場合|介護福祉士受験までのスケジュール
特定技能「介護」で来日した外国人が介護福祉士国家試験を受験するためには、実務経験3年以上と実務者研修の修了が必要です。
なお、実務者研修の修了自体に実務年数の条件はありません。所定のカリキュラム(450時間)を履修し、修了評価に合格すれば修了となります。
また、初任者研修などの資格を保有している場合は、一部科目が免除されることもあります。
そのため、実務経験3年を待ってから研修を開始する必要はなく、早期に修了しておくことで国家試験受験までの準備期間を確保しやすくなります。
入職から介護福祉士国家試験受験までのスケジュール

1年目
現場業務への適応、日本語力の向上が中心。試験対策というより基礎固めの期間です。
2年目
実務に慣れ、専門用語理解が進む時期。
3年目
実務経験要件を満たす準備期間。実務者研修を修了し、本格的な過去問対策に取り組みます。
4年目以降
介護福祉士国家試験受験
ポイントは、「3年経ったら考える」では遅いということです。実務経験を積みながら、段階的に日本語力と試験対応力を高める仕組みが必要になります。
事業者としては、採用時点で、実務者研修の受講計画・試験対策支援の有無・日本語教育の体制を確認しておくことが重要です。
資格取得までの計画を明確にできるかどうかが、人材の定着率や将来的な在留資格更新にも影響します。
介護福祉士国家試験の勉強はいつから始めればいい?
結論として、遅くとも2年目には試験対策を意識した学習を開始することが望ましいと言えます。
実務経験3年以上が受験要件であるため、「3年経ってから準備すればよい」と考えることも可能です。
しかし、国家試験は短期間の詰め込みで対応できる内容ではありません。
専門知識に加え、日本語での読解力や事例問題への対応力も求められるため、段階的な準備が必要です。
特に外国人介護人材の場合、専門用語の理解や長文事例への慣れ、漢字を含む読解力の強化に一定の時間を要します。
日常業務が問題なくこなせていても、国家試験レベルの日本語に対応するには継続的な学習が不可欠です。
そのため、1年目は日本語力の基礎強化を中心に、2年目からは過去問や模擬試験に触れ始めるといった計画的な支援が現実的です。
国家試験対策は直前期の対応ではなく、採用段階から見据えて設計することが重要になります。
受験に向けたポイント
前述のとおり、国家試験対策は直前期の対応ではなく、計画的な設計が求められます。
合格率を高めるために、施設側が確認しておきたい主なポイントは次のとおりです。
① 日本語力の目標設定を明確にする
少なくとも日本語能力試験N2相当の読解力を目安とし、到達状況を定期的に確認します。
② 実務者研修の受講時期を前倒しする
受験直前の3年目に研修と試験対策を同時進行させるのではなく、早期に修了させておくことで、余裕をもって受験準備に取り組めます。
③ 定期的な過去問演習・模試を実施する
問題の出題傾向や形式に慣れておくことで、本来の実力を発揮しやすくなります。
単発ではなく、継続的に取り組める環境づくりが重要です。
④ 学習時間を制度として確保する
個人任せにせず、施設として学習の時間や機会を確保する仕組みづくりが求められます。
勤務時間内の学習機会を設けることで定着率の向上も期待できます。
⑤ 支援機関の役割を明確にする
日本語研修や国家試験対策がどこまで支援に含まれているのか、支援内容と役割分担を契約時に明確にしておく必要があります。
受験までの3年間をどのように設計するかが、将来的な戦力化と在留資格の安定に直結します。
2025年度(第38回)試験より開始 | パート合格制度
2025年度(第38回)の介護福祉士国家試験から、「パート合格制度」が導入されました。
この制度は外国人に限らず、すべての受験者が対象です。
パート合格制度は、試験科目をいくつかの区分(パート)に分け、基準を満たした区分を翌年以降に持ち越せる仕組みとなります。
従来は一部の科目で基準に達しなかった場合でも全科目の再受験が必要でしたが、今後は段階的な合格が可能となります。
合格したパートは翌年・翌々年の受験が免除
パート合格制度では、基準を満たした区分(パート)について、翌年および翌々年の受験が免除されます。
つまり、一度の試験で全科目に合格できなかった場合でも、得点基準を満たしたパートは「合格扱い」となり、不合格だった部分のみを翌年以降に受験することが可能になります。
ただし、免除の有効期間は最大2年間です。合格した翌年と翌々年の試験までが対象となり、それを過ぎると免除は失効します。
従来は、1科目でも基準を下回れば全科目を再受験する必要がありました。
そのため、得意分野があっても翌年には再度すべてを受け直す必要があり、受験者の心理的負担も大きい制度でした。
特に外国人介護人材の場合、日本語読解に関わる分野と知識系分野で得点差が出ることがあります。
パート合格制度の導入により、強みを活かしながら弱点分野を重点的に補強するという勉強方法がしやすくなります。
施設側にとっても、一度の不合格で育成計画が大きく揺らぐリスクを抑えられる点で大きなメリットがあります。
不合格パートのみの受験は2026年度(第39回)から
パート合格制度は2025年度(第38回)試験から開始されますが、不合格パートのみを受験できる運用が本格的に始まるのは2026年度(第39回)試験からとなります。
2025年度(第38回)試験は制度導入初年度にあたるため、実際の免除適用は翌年度以降の受験時に反映されます。
つまり、2025年度(第38回)試験で一部パートに合格した場合、その合格パートは2026年度(第39回)および2027年度(第40回)試験で免除される仕組みです。
制度開始初年度はやや分かりにくい部分があるため、受験年度と免除適用年度を混同しないよう注意が必要です。
複数年にわたる育成計画を立てる場合は、試験回次ではなく年度ベースで整理しておくと管理しやすくなります。
全パート受験と一部パート受験の受験手数料
2025年度(第38回)介護福祉士国家試験の受験手数料は、18,380円でした。
パート合格制度の導入により、一部パートのみを受験する場合は、全パート受験よりも受験手数料が軽減される予定です。
ただし、具体的な金額は年度ごとに公表されるため、最新の試験案内を確認する必要があります。
また、国家試験合格後には別途登録費用が必要となります。
登録免許税は9,000円、登録手数料は3,000円台が目安であり、資格取得までの総費用として考慮しておくとよいでしょう。
パート合格による在留期間延長(1年)の特例措置
特定技能「介護」の在留期間は通算で最長5年が原則ですが、介護福祉士国家試験の受験を目的とする場合、一定の条件を満たせば最長1年間の在留期間延長が認められる特例措置があります。
これは国家資格に不合格となった場合でも再受験の機会を確保するための制度で、延長が認められれば、翌年度の試験に挑戦することが可能になります。
在留期限が合格発表前に到来するケースがありますので、結果を待ってから手続きを行うのではなく、期限を見据えて事前に申請準備を進めておきましょう。
対象者と条件
在留期間延長の特例措置は、自動的に適用される制度ではありません。
介護福祉士国家試験の受験を前提としており、一定の要件を満たす場合に限り認められます。
主な条件としては、以下の点が挙げられます。
- 介護福祉士国家試験を実際に受験していること、または次回試験の受験が確実であること
- 実務経験3年以上など、国家試験の受験資格を満たしていること
- 特定技能「介護」として適切に就労を継続しており、法令違反や重大な勤務上の問題がないこと
- 在留期間満了前に、延長申請を行っていること
延長は原則として1年間であり、審査を経て認められます。要件を満たしていれば必ず許可されると断定できるものではありません。
そのため、在留期限、試験日、合格発表日をあらかじめ照合し、延長の必要性や申請タイミングを早めに検討しておくことが重要です。
まとめ
外国人介護人材の介護福祉士国家試験合格率は、全体平均と比べると低い傾向にあります。
しかし、その背景には日本語力や学習環境、支援体制といった構造的な要因があり、個人の能力だけで説明できるものではありません。
2025年度(第38回)からはパート合格制度が導入され、段階的に合格を目指せる仕組みが整いました。
さらに、国家試験受験に関連する在留期間延長の特例措置もあり、制度面での選択肢は広がっています。
一方で、特定技能「介護」は通算5年が原則であり、国家試験の合否は在留継続に直結します。
合格すれば在留資格「介護」へ移行し、長期的な就労が可能になりますが、不合格が続けば帰国となる可能性もあります。
重要なのは、「採用」と「資格取得」を切り離さないことです。
在留期限、受験スケジュール、実務者研修の受講時期、支援機関の役割分担までを一体で設計することが、最終的に人材の安定につながります。
外国人介護人材は、ただの人員の穴埋めではありません。
制度を正しく理解し、国家資格合格までを見据えた設計ができるかどうかが、5年後の戦力を左右します。
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参考記事・サイト紹介
静岡県内の特定技能介護人材の紹介と支援 | アクタガワHRM
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