介護職が行うケアは介護が必要な高齢者にとって、生活に必要な大切なものです。しかし、介護職の中には、適切なケアを実施することが難しく不適切なケアを提供してしまうケースも有ります。
不適切なケアは高齢者の体を危険にさらすだけではなく、尊厳も損なうものとなっていますので、介護職としては避けなければいけません。不適切なケアとは一体どういうものなのか、不適切なケアで注意すべきポイントなどについてご紹介していきます。
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不適切なケアについて
不適切なケアはいったいどのようなものなのでしょうか?具体例を挙げてみていきましょう。
力任せに介護をする
特に男性の方や、力のある女性の方などに多いのですが、自分の力を精一杯使って力任せに介護をするケースがあります。
多くの場合、力任せの介護は高齢者を危険にさらしてしまうので注意が必要です。移乗介助の場合を例にとると、寝たきりの方であれば本来2人で介助することが基本ですが、お姫様だっこのように1人で介助をすることもあります。
人員が足りない、時間が足りないなど様々な理由がありますが、場合によっては高齢者を落下させる可能性があるこの介助は適切ではありません。力任せに介護をすると、ぎっくり腰などでその力が入らない場合事故になってしまいますので注意が必要です。
職員のペースで介護をする
これもよく見られる事例です。例えば、食事介助です。食事は本来食べる方のペースで食べます。自分のペースで食べるからこそむせませんし、おいしく食べることが出来るのです。
時間が無い場合や、介護職自身高齢者のペースで食べてもらう事を意識していなければ、早いペースで食事介助をすることになり、結果的に誤嚥やのど詰めに繋がることもあるのです。これは食事介助以外でもあり、おむつ交換などでも見られます。
おむつ交換の場合、高齢者の体を横に向けることもあり、その勢いが強すぎると柵に衝突したり、非常に怖い思いをさせてしまうこともあり、不適切であると言えます。
暴言について
暴言とは職員の発言によって高齢者に心理的なダメージを与えることです。これが難しいのは、職員が悪いことだと、不適切なことだと意識しておらず発生していることがあるからです。
例にとってみていきましょう。ある職員は新しく老人ホームに入ってきた高齢者と仲良くなろうと、敬語では話さず「〇〇ちゃん、よろしくね」などと、友人などに話すようなイメージで話しかけていました。
職員としては高齢者に早く慣れてもらうように配慮した結果ですが、高齢者からしてみれば初対面で、自分よりも年下の方からいきなりそのような言葉を使われて、非常に心を痛めました。また、認知症の方に対して「何度も同じことを言わないで」「本当に頭が悪い」と尊厳を傷付ける発言をする場合もあります、これは介護職が感情に任せて言った言葉であることがあり、意識して注意をしなければいけません。
不適切なケアを無くす為には
不適切なケアは、多くの老人ホームで起こっており、後々大きな事故につながる可能性もあります。不適切なケアを行わないためにはどのようにしていけば良いのでしょうか?
仕事を見直す
頭の中では悪いと分かっているが、不適切なケアを行ってしまう場合があります。これが起きる理由としては職員のストレス、働く環境が悪いということが考えられます。
この場合は、やはり仕事の中身を見直すことが大切になります。ストレスを感じて、仕事に追われて不適切なケアが出てしまうからです。移乗介助の際に2人で介助をせずに1人でお姫様抱っこで介助してしまうのは、仕事が忙しいから、1人でやった方が早いからという理由があります。
仕事の中身を見直して、職員が少しでもゆとりを持って仕事が出来るようになるのが、適切なケアをする第一歩であると言えます。また、これは職員のペースではなく高齢者のペースで生活をしてもらうために必要なことだといえます。
高齢者を理解する
介護をする誰もが高齢者を経験していません。そのため、子供に比べると高齢者の心理状態を理解することは難しいと言われています。しかし、介護職員は高齢者の心理というものを理解しなければいけません。
老人ホームに入居した高齢者は、期待を不安を交えて生活をします。本当に自分は受け入れてもらえるのか、大切にしてもらえるのかという思いを持っています。不安を抱えているからこそ、丁寧に対応をする必要がありますし、丁寧とは言葉から伝わりますので「ため口」で話すことは良くありません。
信頼関係を築くために敬語以外で話すことは、高齢者の不安な気持ちに配線していない不適切なケアであるといえるのです。
認知症を理解する
認知症の方に対してついついキツイ言葉を発してしまう方もいるかと思います。しかし、これは認知症という病気を理解していないからです。
認知症を理解していれば、キツイ言葉を言うことは間違いであるのがわかります。認知症の症状は短期記憶障害や見当識障害です。
例えば、パーキンソン病で歩くことが不自由な方に対して「もっときちんと歩いてください」と言ったり、脳便塞で寝たきりの方に対して「いつまでも寝ていないで」とは誰もが言わないかと思います。
認知症は病気だということを理解し、認知症の症状を理解することによって適切なケアが出来ます。よく認知症の方は人格を否定されがちです。介護職は人格と病気は分けて考えます。高齢者が何度も何度も同じことを聞いてくるのは、その人の性格だからではなく病気のせいだからです。
ついつい「〇〇さんは本当に心配性ですね」と人格を決めつけるような声かけをしている方もいますが、認知症と人格を分けて考えることが出来れば、そのような声掛けはしないでしょう。
まとめ
不適切なケアは高齢者の安全を阻害し、尊厳を傷つけることもあります。介護職は本来高齢者を支援して、充実した生活を送ってもらうことが目的ですので、不適切なケアは行わないよう気を付けておきましょう。
どうしてもストレスが溜まったり、人が足りなかったりするときは、「家族の前で同様のケアが出来るのか」を考えて一呼吸置くと良いでしょう。それが不適切なケアを行わないためのポイントです。