【1人5.4万円相当】介護職員一時金とは?対象や補助額についてわかりやすく解説

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介護職員一時金とは?

 

「一時金が支給されるが、事業所として何を準備すればいいのだろう?」「自分はいくら支給されるのかわからない」

このような不安をお持ちの施設長や介護職員の方もおられるかもしれません。

「5.4万円」という金額が注目されがちですが、この制度の正式名称は「令和6年度介護人材確保・職場環境改善等事業」です。補助金の目的は、一時金支給ではなく「生産性向上」に取り組む事業所を支援するためのものです。

 

この記事では、介護施設長や介護職員の皆様が知っておくべき内容について、以下の点を解説いたします。

 

  • 補助対象となるための要件
  • 補助金の使い道と事業所の裁量
  • 補助額の計算方法

 

制度を正しく理解しないまま進めると「要件不備で補助金返還」や「職員との認識ズレによる不満」といったリスクにもつながりかねません。介護職員一時金について詳しく知りたい方は、最後までお読みください。

 

介護職員一時金の目的と対象事業所


一般的に「介護職員の一時金」と呼ばれているこの制度の正式名称は「令和6年度介護人材確保・職場環境改善等事業」です。令和6年6月から始まった新しい「介護職員等処遇改善加算」とは異なり、別の制度として実施されています。今回の補助金は、令和6年度の補正予算を財源とした単年度限りの事業である点に注意が必要です。

この制度の目的は、単にお金を配布することではありません。厚生労働省は「生産性向上」や「業務効率化」に取り組む事業所を支援し、将来的な介護人材の確保・定着の基盤を整えることを目指しています。

したがって、この補助金は「一時的な支給金」ではなく、業務改善を進めるための大切な投資資金として捉えることが重要です。

 

補助対象は?

まず、この補助金を受け取るための第一の条件は、令和6年6月に一本化された新しい「介護職員等処遇改善加算」の(Ⅰ)~(Ⅳ)のいずれかを取得していることです。

ただし、以下の事業所も対象に含まれます。

 

<対象に含まれる事業所>

  • 経過措置として「新加算(Ⅴ)」を取得している事業所
  • 現時点(令和6年度)で新加算をまだ取得していないものの、今回の補助金の申請時に「令和7年度から新加算を取得予定」とする計画書を提出している事業所

 

一方で、制度の対象外となるサービスもあります。そもそも、新しい処遇改善加算の制度そのものが適用されないためです。

 

<対象外となる主なサービス>

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅介護支援(ケアマネジャー)
  • 福祉用具貸与・販売

 

以上の事業所は、今回の補助金の対象外となります。

 

参考:厚生労働省「介護人材確保・職場環境改善等事業のご案内」.令和6年版,2024.https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/2025-03-11-104711-390,(参照 2025-11-9)

 

生産性向上の取組みも補助要件

処遇改善加算の取得と並び、もう一つ重要な要件があります。それが「生産性向上の取組み」を計画し、実際に実行することです。

この制度は「業務改革のための原資」として位置づけられており、単に介護ロボットなどの機器を購入するだけでは不十分です。その前段階として「どのように業務を見直し、改善を進めるのかという計画(プロセス)を立て、実行すること」が義務づけられています。

もしこの計画の実施を怠った場合、補助金の交付要件を満たしていないと判断され、後から補助金の返還を求められる可能性もあります。施設管理者にとっては、加算の取得状況と同様に、必ず確認しておくべき重要なポイントです。

 

生産性向上の取組みの具体的な内容     

「生産性向上の取組み」とは、高額な機器の導入から始めるものではありません。実施要綱では、まず以下の「計画の進め方(プロセス)」を実行することが必須とされています。

 

【計画の進め方(プロセス)】

体制構築

生産性向上に関する委員会やプロジェクトチームを設置し、定期的に話し合いを行いましょう。必要に応じて、外部研修への参加や専門家の助言を受けることも推奨されています。

 

現場課題の見える化

現場の業務を一つひとつ洗い出し、どの作業に時間がかかっているのかを明確にします。いわゆる「業務の棚卸し」です。非効率な部分や改善の余地がある業務を把握します。

 

役割分担の明確化

上記の分析を踏まえて、介護職員でなくてもできる業務を抽出し、誰が担うかを整理します。業務分担の見直しにより、介護職員が本来のケア業務に集中できる環境を整えることが目的です。

 

施設管理者にとって、特に重要なのは、これらの計画を実行した証拠(エビデンス)を残すことです。例えば、委員会の議事録や業務の棚卸し表、役割分担表などを作成・保管しておくことで、監査時に「要件を満たしている」ことを証明できます。

これらの計画プロセスを踏まえたうえで、以下のような取組みを進めていきましょう。これらに要する費用は、後述する「職場環境改善経費」の対象となります。

 

【具体的な取組み例】

  • DX・ICT化:介護記録ソフト、インカム、見守り支援機器の導入
  • 介護ロボット:移乗支援機器、排泄支援機器の導入
  • 業務・役割分担:清掃やベッドメイクを担う介護助手の採用、または外部委託
  • その他:腰痛対策研修の実施、休憩室や更衣室の改修などによる労働環境改善

 

このように「生産性向上の取組み」では、計画・実行・記録までを一体的に行う取り組みであることを意識し実行しましょう。

 

参考:厚生労働省「介護人材確保・職場環境改善等事業のご案内」令和7年版,2025

 

補助される対象経費は?


介護職員一時金とは?

 

支給された補助金の使い道は、①職場環境改善経費と②人件費の2種類に限定されています。重要なポイントは、この2つの経費にどのような割合で配分するかは事業所の裁量に委ねられているという点です。

 

例えば、以下のような配分が考えられます。

 

  • 職員への還元を最優先し、補助金の全額を人件費(一時金など)に充てる
  • 将来の業務効率化を重視し、全額を職場環境改善経費(ICT導入や設備改修など)に充てる
  • 人件費70%、環境改善費30%」のように、バランスを取った配分も可能

 

制度の本来の目的は、生産性の向上と人材の定着の「両立」にあります。そのため、短期的な還元(人件費)と中長期的な投資(環境改善)をうまく組み合わせることが、最も効果的な活用方法といえるでしょう。

 

①職場環境改善経費

「職場環境改善経費」とは、前述の「生産性向上の取組み」を実行するために必要な費用のことです。

具体的には、介護ソフトやインカムの導入費用やリース費用、介護ロボットの購入費用が該当します。また、介護助手を新たに採用するための求人広告費や、職員のスキルアップ研修の参加費、休憩室を改修するための費用なども対象です。

ただし、これらの費用は「いつ発生したものか」が問われます。原則として、都道府県からの補助金交付が決定される前や、補助額計算の基準月よりも前に発生した費用は対象外となります。

例えば「過去に購入済みだった機器の代金」を、今回の補助金で後から補填するような使い方はできないため注意が必要です。

 

②人件費

介護職員などの賃金改善(退職手当を除く)に充てることが可能です。対象には、介護職員だけでなく、必要に応じてその他の職員も含められます。

この補助金は、ベースアップ(基本給や毎月の手当を恒常的に引き上げること)を目的としたものではありません。ただし、各事業所の判断として、生産性向上や職場環境改善の取組によって「将来の持続的な賃上げにつなげるための原資」として活用することは可能です。

また、交付期間中は、前年同時期と比べて人件費改善の対象職員の平均賃金水準を下げてはならないことが定められています。このように、人件費への補助金活用は、短期的な処遇改善にとどまらず、職員が安心して働き続けられる職場づくりを支える制度として位置づけられているのです。

 

事業所への補助額


介護職員一時金とは?

 

補助額は「1人あたり5.4万円」で一律に決まるものではなく、各事業所の介護報酬実績をもとにした計算式によって算出されます。補助額は、以下に説明する「介護総報酬 × サービス別交付率」という計算式によって決定することを理解しておきましょう。

 

1か月当たりの介護総報酬にサービスごとの交付率を掛けた金額

補助額は「1か月あたりの介護総報酬 × サービス別交付率」で算出されます。介護総報酬とは、事業所が介護サービスの提供により国保連から受け取る報酬の合計です。

また、算定の基準となるのは、原則として令和6年(2024年)12月の実績です。ただし、12月のサービス実績が通常より大きく減っているなど、特別な事情がある場合は、各事業所の判断で令和7年(2025年)1月〜3月のいずれかを基準月として選択できます。

 

【例】

介護総報酬が1,000万円の通所介護事業所(交付率6.4%)の場合

補助額は、約64万円(1,000万円×6.4%)が目安です。

交付率はサービスの種類ごとに異なり、以下のように設定されています 。

 

サービス区分(予防含む) 交付率
訪問介護・夜間対応型訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 10.5%
訪問入浴介護 6.3%
(地域密着型)通所介護 6.4%
通所リハビリテーション 5.5%
(地域密着型)特定施設入居者生活介護 7.4%
認知症対応型通所介護 13.2%
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護 8.4%
認知症対応型共同生活介護 11.3%
介護福祉施設サービス・短期入所生活介護 8.3%
介護保健施設サービス・短期入所療養介護(老健) 4.3%
介護医療院サービス・短期入所療養介護(病院等・医療院) 2.7%

 

同じ職員数でも、サービス種別や報酬規模によって補助額は異なります。事業所の報酬実績をもとに交付率を掛け合わせ、見込額を事前に試算しておくことが重要です。

 

参考:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1352」令和7年版,2025

https://www.mhlw.go.jp/content/001403387.pdf,(参照 2025-11-9)

 

 

常勤1人あたり5.4万円であることに注意が必要

「常勤1人あたり5.4万円」という金額は、国が全国平均をもとに算出した目安であり、実際に全員へ一律支給されるわけではありません。補助金は事業所単位で算出されるため、最終的な金額は変動します。

また、今回の補助金を人件費の改善に充てる場合、常勤職員だけでなく、パートやアルバイトなど非常勤職員にも配分することが可能です。これは事業所の判断に委ねられており、働き方に応じて公平な形で配分されることが想定されています。

以上の状況を考慮すると、常勤介護職員以外にも配分する、または職場環境改善経費にも一部充当する場合「常勤1人あたり5.4万円」満額を支給できる事業所は少ないと考えておくのが現実的です。

 

まとめ


 

介護職員の一時金は「生産性向上」と「人材定着」を目的とした補助制度です。

 

対象は、新処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)を取得している事業所で、使い道は①職場環境改善経費と②人件費の2つに限定されています。補助額は「基準月の介護総報酬 × サービス別交付率」で決まり「常勤1人あたり5.4万円」はあくまで全国平均の目安です。非常勤職員への配分も可能で、最終的な金額や配分は事業所の裁量に委ねられます。

 

この記事のポイントは、以下のとおりです。

  • 制度の目的:一時金ではなく「生産性向上」に取り組む事業所を支援する業務改革のための補助金です。
  • 必須要件:加算取得に加え「生産性向上委員会」の設置や「業務の洗い出し」などのプロセスを実行し、議事録などを残す必要があります。
  • 経費の裁量:補助金の使い道は「人件費」と「職場環境改善費」の2種類です。配分は事業所の経営判断に委ねられています。

 

今回ご紹介した「介護職員一時金」は、生産性向上や職場環境の改善への取り組みを支援する制度です。今後は、ICT化や業務効率化に積極的に取り組む事業所ほど、働きやすさを求める介護職員から選ばれ、人が集まる時代になるでしょう。

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