
「介護人材を採用したいけれど、登録支援機関ってそもそも何だろう」「登録支援機関の選び方がわからない」と、施設長や経営者の方は不安に感じてしまいますよね。
特定技能「介護」で特定技能外国人の介護人材を受け入れる場合、生活面・就労面のサポートを充実させることが、早期離職や無断欠勤、ハラスメントなどのトラブルを防ぐうえで重要です。
そこで役割を担うのが、登録支援機関です。
この記事では、登録支援機関とは何か、特定技能「介護」における具体的な支援内容から登録支援機関の選び方までわかりやすく解説します。これから特定技能外国人の介護人材を受け入れたい方は、ぜひご覧ください。
Contents
登録支援機関とは?
登録支援機関とは、出入国在留管理庁に登録された民間の機関で、特定技能外国人への支援業務を介護施設などから委託されて担う専門機関のことです。
本来、特定技能外国人を雇用する受入れ機関(介護施設・法人側)には、出入国時の送迎や住居探し、各種公的手続きのサポートなどといった、特定技能外国人が職業生活、日常生活、社会生活を安定的かつ円滑に行えるようにする支援計画を作成する義務があります。
すべての支援計画を、受入れ機関だけで準備・実行するのは難しいケースが多いため、登録支援機関を活用します。
登録支援機関に雇用支援を委託することで、制度に沿った支援計画づくりや特定技能外国人の生活立ち上げや定着支援、トラブル時の相談・調整といった役割を、専門知識と経験を持つ外部のプロに任せることができます。
特定技能「介護」の場合、日本語でのコミュニケーション、夜勤・シフト勤務、身体介護への不安など、特定技能外国人の負担も事前にケアしながら、介護現場への定着を支えます。
参考:出入国在留管理庁 「特定技能外国人を受け入れる際のポイント」(令和3年12月更新)
特定技能「介護」の制度における支援内容
特定技能の制度では、受入れ機関が特定技能外国人ごとに支援計画を作成し、その計画に沿って支援を実施することが求められています。登録支援機関は、支援計画づくりから実行までを一括でサポートする役割を担います。
特定技能「介護」の制度における主な支援内容は、以下のとおりです。
- 事前ガイダンスの実施
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活契約の支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続きなどへの同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 定期的な面談
入国前から現場に慣れ、長く働き続けるまでを一連のフローとして、切れ目なく支援するのが登録支援機関の役割です。
それぞれの支援内容について詳しく解説します。
参考:出入国在留管理庁 「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
事前ガイダンスの実施
事前ガイダンスとは、特定技能外国人が日本に在留するに当たり、留意すべき点や雇用契約の内容などを事前に説明することです。雇用契約を締結したあとや在留資格関連の申請を行う前に実施する必要があります。
ガイダンスで伝える必要がある内容は、主に以下のとおりです。
| 説明内容 | 詳細 |
| 労働条件・活動内容 | ・介護業務の内容(身体介護、生活援助、レクリエーションなど) ・給与の目安、賞与の有無 ・勤務時間、残業の扱い(夜勤やシフト勤務の有無) ・休日・休暇 |
| 入国・在留条件 | ・必要な在留資格の書類 ・在留期間と更新の条件 ・在留カードの取り扱い ・各種手続き(住民登録、健康保険・年金加入など) |
| 保証金徴収等の有無 | ・違法な保証金・違約金の禁止 ・保証金・違約金を要求された場合の相談先の案内 ・注意喚起(金銭に関する条項を理解しないまま署名しない) |
| 費用負担 | ・家賃、光熱費、共益費などの金額と支払い方法 ・業務に必要な物品の費用負担 ・在留資格の申請や更新にかかる手数料 ・各種手続き費用の負担 |
説明の内容は、特定技能外国人が十分に理解することができる言語またはわかりやすい日本語で丁寧に伝える必要があります。
出入国時の送迎
受入れ機関は、特定技能外国人が安全に日本へ入国し、また円滑に帰国できるよう、送迎や同行を実施する必要があります。入国時は、空港まで迎えに行き、住居や事業所まで同行して移動をサポートし、帰国時には、住居などから空港まで送り届けます。
送迎の支援を行うことにより、特定技能外国人は道に迷う不安や電車・バスの乗り継ぎによるストレスが軽減され、安全に拠点まで到着することができます。また、事業者側にとっても、入国初日から安心して受け入れられる体制が整うことで、円滑な受け入れにつながります。
住居確保・生活契約の支援
特定技能外国人が、日本で安定した生活を送れるよう、適切な住居の確保に係る支援を行う必要があります。
具体的な支援内容は以下のとおりです。
| 支援内容 | 詳細 |
| 賃貸住宅の契約 | ・不動産会社の紹介 ・物件選びの相談 ・契約時の同行・内容説明 ・必要書類の案内 |
| 生活に必要な契約 | ・電気・ガス・水道の開栓手続き ・携帯電話やインターネットの契約 ・家具・家電の準備方法のアドバイス ・預貯金口座の開設 |
登録支援機関が間に入ることで、言語の壁や審査の不安を軽減し、短期間で生活基盤を整えやすくなります。
生活オリエンテーションの実施
生活オリエンテーションは、日本での生活ルールや地域の情報をまとめて説明する場です。特定技能外国人が日本で円滑に暮らせるよう、日本のルールや生活に関する一般的事項について情報を提供することを目的としています。
生活オリエンテーションで情報提供する主な内容は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 日本での生活一般に関する内容 | ・金融機関の利用方法(ATMの使い方、銀行口座開設など) ・交通機関の利用方法(バス・電車の乗り方など) ・住宅でのルール(ゴミ出しの方法、共有スペースの使い方など) ・家賃、光熱費、携帯料金などの支払い方法 |
| 法的保護に関する内容 | ・労働条件・労働基準法に関する基本 ・有給休暇の基本的な仕組みと取得ルール ・ハラスメント防止 ・契約・更新に関する説明(在留資格と雇用契約の関係) |
| 医療機関に関する内容 | ・医療機関の利用方法 ・健康保険の仕組み ・医療費の自己負担割合と保険が使えない場合の注意点 ・体調不良時の対応 ・仕事を休む必要があるときの連絡方法とタイミング |
| 相談・苦情の連絡先 | ・職場内の相談窓口 ・職場での相談の方法 ・登録支援機関の相談窓口 ・外部の相談機関(自治体の多言語相談センターなど)の案内 ・労働局・労働基準監督署、法テラスなど、公的機関の情報 |
| 防災・防犯・緊急時の対応 | ・災害への備え ・火災・事故への対応 ・防犯上の注意 |
| 法令違反時の対応 | ・法令違反の例を具体的に説明 ・法令違反が疑われる・巻き込まれた場合の対応方法 |
受入れ機関や生活環境によって必要な情報は異なるため、それぞれの特定技能外国人のケースに合わせた情報提供を行うことが大切です。
公的手続き等への同行
公的手続き等への同行も登録支援機関が行うサポートの1つです。
日本で働き生活するには、主に以下の公的手続きが必要になります。
- 市区町村での住民登録
- 健康保険・年金の加入手続き
- 銀行口座の開設
- マイナンバー関連の手続き など
公的手続きの負担を軽減するために、手続きの流れを事前に説明し、窓口の同行や申請書の記入方法のサポートをします。手続きの漏れや誤記入によるトラブルを防ぎ、特定技能外国人がスムーズに就労・生活を始められるよう支援します。
日本語学習の機会の提供
登録支援機関は、日本語学習の機会として以下の情報を提供します。
- 地域の日本語教室・ボランティア教室の案内
- オンライン学習サービスやアプリの紹介
- 介護現場で使う日本語に特化した教材の提供、研修受講の案内
- 学習時間の確保について受入れ機関と調整 など
日本語学習は、一度教えて終わりではなく、学び続けられる環境づくりを支援することが大切です。
相談・苦情への対応
特定技能外国人からの相談や苦情への対応を行うことも支援内容の一つです。相談担当の職員を配置し、特定技能外国人が理解しやすい言語で対応できる体制づくりが求められます。24時間対応までは不要ですが、勤務日に週3日以上・休日に週1日以上は対応できる時間を設け、夜勤明けなど就業時間外でも相談しやすいよう工夫します。
介護分野では、利用者や家族からのハラスメントにも注意が必要です。対応マニュアルの作成、管理者の役割分担の明確化、利用者への事前周知、実際に被害があった場合に相談できる窓口や連絡先を明示し、いつでも相談できる仕組みを整えることが重要です。
定期的な面談
登録支援機関は、特定技能外国人と受入れ機関の双方と、定期的に面談を行うことが求められています。
面談で確認する主なポイントは、以下のとおりです。
| ポイント | 確認内容 |
| 業務内容・労働条件 | ・契約時の条件とずれはないか ・残業や夜勤などの負担感はないか |
| 職場環境・人間関係 | ・ハラスメントの有無 ・指導の仕方への不満 |
| 健康状態・生活状況 | ・体調不良、睡眠不足について ・生活面の困りごとはないか |
| 今後の就労意欲 | ・今後も長く働きたいか ・キャリアプランの希望 |
面談は、支援責任者または支援担当者が少なくとも3か月に1回以上の頻度で実施する必要があります。万が一、労働基準法違反や関係法令などの違反が発生した場合、関係行政機関に通報する必要があります。
登録支援機関に支援を委託(依頼)するメリット
受入れ機関が、登録支援機関に支援を委託するメリットを以下の表にまとめました。
| メリット | 詳細 |
| 業務負担の軽減 | 入国準備〜生活立ち上げ〜定着支援までの多くを任せられ、人事・現場の工数を大幅に削減できる |
| 制度関連対応の安心感 | 在留資格や特定技能制度に詳しいプロに任せられるため、法令違反のリスクを減らすことができる |
| 定着・トラブル防止 | 相談窓口や定期面談により、早期離職やトラブルについて早期に対応できる |
| 経営面でのプラス効果 | 介護サービスの質向上や既存職員の育成など、本業に経営資源を集中しやすくなる |
こうしたメリットを踏まえると、登録支援機関への委託は、特定技能外国人の受け入れを安定させるための投資として位置づけることができます。
登録支援機関の費用相場
出入国在留管理庁が実施した意識調査によると、特定技能外国人1人あたりの月額支援委託料の平均額は28,386円です。
月額支援委託料の金額帯は以下のとおりです。
| 月額支援委託料の金額帯 | 構成比 |
| 5,000円以下 | 0.9% |
| 5,000円超〜10,000円以下 | 6.4% |
| 10,000円超〜15,000円以下 | 9.5% |
| 15,000円超〜20,000円以下 | 25.3% |
| 20,000円超〜25,000円以下 | 26.2% |
| 25,000円超〜30,000円以下 | 20.3% |
| 30,000円超 | 11.5% |
登録支援機関のなかには、支援の内容ごとに支援委託手数料を設定しているところもあります。入国前に行う事前ガイダンスや生活オリエンテーションなどについては、月額の支援委託費とは別に初期費用がかかる場合が少なくありません。こうした初期費用の金額や範囲は、どの登録支援機関を利用するかによって異なります。
参考:出入国在留管理庁 「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」
介護分野に特化して情報は公共機関のデータでは見つかりませんでした。
以下のサイトでは、「介護分野では他業種より2~3割高く設定されるのが一般的です。」との記載されいている記事がありましたが、情報源の明記がなかったため、ここでは入力しておりません。
人材ミライ【2025年最新】特定技能ビザは申請代行に頼むべき?行政書士や登録支援機関に依頼するメリット・デメリット
https://jinmira.com/column/13
登録支援機関の選び方
特定技能制度における登録支援機関の総数は8,000機関以上にも及ぶため、質の高い登録支援機関を選定することが重要です。
ここでは、登録支援機関の要件・義務を確認し、選ぶときのチェックポイントについて解説します。
登録支援機関の要件と義務
登録支援機関として特定技能外国人の支援を行うには、主に以下の要件が定められています。
| 要件 | 詳細 |
| 機関の適格性・欠格事由 | ・過去5年以内の重大な刑罰・出入国・労働・暴力団等関連法令違反がないこと ・登録取消から5年以内でないこと ・暴力団関係者でないこと |
| 不正行為の禁止 | ・外国人への暴行・脅迫・報酬不払い・不当な私生活制限などの不正行為をしていないこと ・保証金徴収や違約金契約などで金銭を縛らないこと ・偽造・虚偽文書を用いないこと |
| 支援体制の整備と実績 | ・過去1年間に、自らの責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと ・支援責任者および支援業務を行う事務所ごとの支援担当者が選任されていること ・過去2年間に中長期在留者の受入れ、管理の実績、または在留外国人に関する各種相談業務の経験があること ・支援を的確に遂行できる体制を有していること |
| 費用の負担と明示の義務 | ・支援費用を外国人本人に負担させないこと ・支援委託契約時に受入れ機関へ費用の額と内訳を明示すること |
| 文書作成・備え置きの義務 | 支援業務の実施状況に関する文書を作成し、特定技能雇用契約終了日から1年以上、事務所で保管すること |
また、登録支援機関の義務は以下の2点です。
- 外国人への支援を適切に実施すること
- 出入国在留管理庁への各種届出を行うこと
登録支援機関を選ぶときのチェックポイント
複数の登録支援機関を比較・検討するときのチェックポイントは以下のとおりです。
- 特定技能「介護」の支援実績はどのくらいあるか
- 対応している国籍・言語、通訳体制は充実しているか
- トラブル発生時の対応体制は十分か
- 実際の支援内容はどこまで具体的か
- 義務的支援以外の支援を行っているか(日本語学習サポート、資格取得支援など)
- 費用とサービス内容のバランスは適切か
- 自社の理念や現場の雰囲気を理解してくれる姿勢はあるか
登録支援機関を選ぶ時は、単に費用が安いところではなく、義務的支援に加えて日本語学習や資格取得支援などの付加的な支援内容も含めて比較し、自社の現場と相性が良く、長く付き合えるパートナーを選ぶことが大切です。
まとめ
登録支援機関とは、出入国在留管理庁に登録された機関で、特定技能外国人への支援業務を介護施設などから委託されて担う存在です。
自社に合った登録支援機関をパートナーとして選ぶことは、特定技能外国人の介護人材にとって働きやすい職場づくりと事業者側の安心した受け入れ体制の両方につながります。
義務的支援だけでなく、より丁寧な日本語学習や特定の資格取得支援など付加的な支援まで実施している登録支援機関を選ぶことで、現場や人事担当者の負担を減らすことができます。
これから特定技能「介護」での採用を検討している施設・法人の方は、ぜひ本記事のポイントを参考にしながら、具体的な候補の比較・検討を進めてみてください。
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