【介護技術の基本】排せつ介助における便の拭き方 介護技術向上のポイントと声かけ時の注意点を解説

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被介護者の方にトイレ介助やおむつ交換などの排せつ介助を行う際に、排尿であれば気にせずに陰部を拭いている介護士の方もいるかと思いますが、便になると拭き取りは介護職の業務の中でも労力のいる大変な業務ですよね。

綺麗にしたいけど中々に綺麗にならない、本当にこの拭き方でいいのか?など疑間を感じて、もっと上手く拭けるようになりたいと思っている方も多いのではないでしょうか?

ここでは便の拭き方の基本や介護技術向上のポイント、注意点などについてご紹介していきます。

 

排せつ介助の前に準備する物、便の拭き方の基本

おむつを利用している被介護者への排せつ介助は、便を拭き取る作業とおむつ交換する作業の2つの工程で行われます。

排せつ介助を効率的に行うには、下記の物品を事前にそろえておくことが大切です。

 

便の拭き取りに必要な物品・陰部洗浄ボトル
・トイレットペーパーもしくはティッシュ
・タオルもしくはお尻拭き

 

おむつ交換に必要な物品

・新しいおむつ、尿とりパッド
・新聞紙
・ケアシーツ
・ビニール袋
・トイレットペーパー
・使い捨ての手袋

また、排せつ介助に必要な物品は、なるべく被介護者の顔から離れた位置に準備しましょう。必要な物品をそろえた後は床に新聞紙などを敷き、汚物を置く場所を確保します。その後、使い捨て手袋を着用して、排せつ介助を行ってください。

便を拭く際の基本は大きく分けると3つあります。

①おむつである程度拭う

②便は前から後ろに拭く

③出来るだけお湯で洗い流すです。

この3つの基本を押さえるだけで、便を拭くことは簡単になりますし、何よりも綺麗にすることが出来て、被介護者の清潔な状態を保てます。

 

介護技術向上ポイント:便の拭き方・おむつ交換手順

先程挙げた便を拭く際の基本の3つの動作をそれぞれ確認してみましょう。

各手順で無駄なく行うポイントを解説していきます。

おむつである程度拭う

おむつは吸収性もよいですので、特に下痢便の際に使用すると綺麗に拭くことができます。便が出たからといっておむつの全部が便で汚れていることは稀です。特におなか辺りのおむつは全く汚れていないこともあるでしょう。

そういった汚れていない部分を使って先に便をある程度拭いておきます。先に便の固まりは除いておいた方がスムーズにその後の作業を行えます。

ポイント

便が出ているとどうしても先にタオルで拭いてしまいがちですが、いきなりタオルで拭いてしまいますと便が伸びて余計に汚れてしまうことがあります。

特に柔らかい便や下痢便の際はこういった状態になりがちなので、いきなりタオルで拭くということは避けておいた方が良いです。便を付けていたおむつで取り除いた上で、タオルで拭くほうが効率的です。

 

便は前から後ろに拭く

これは便を拭く際の基本的な動作です。

便が出ている場合は、前から後ろに拭きます。その理由としては後ろから前に拭いてしまいますと、膣に便が入りこんでしまって、感染症などを引き起こしてしまうリスクがあるからです。

また男性被介護者でもあっても陰部に便が付きやすくなってしまいますので、尿道に便が入って尿路感染などを引き起こしてしまう可能性があります。

必ず便は前から後ろにやさしく拭くようにしましょう。

出来るだけお湯で洗い流す

便を拭く場合、拭くだけである程度綺麗になりますので、拭いたら終わりと考える方もいるかと思いますが、便は想像以上に皮膚に留まりやすい物です。

粘着質な便もありますので、拭くだけでは綺麗にならないこともあるので注意しておきましょう。

常温の水や冷水が陰部にかかるとが被介護者の体調を崩す、驚かせてしまう可能性があるため、38〜40度程度のお湯で流しましょう。暖かいお湯を使うことで、便を拭き取りやすくなるというメリットもあります。

私たちが例えば失禁した場合、タオルだけで拭くだけでは気持ち悪いと感じますし、臭いも付いたままです。出来ればシャワーを浴びたいと思うでしょう。

それと同じで被介護者もお湯で洗い流さないと不快を感じてしまう方もいるのです。

ある老人ホームでは便失禁をした高齢者に対してはその日にお風呂に入ってもらう施設もあるほどです。毎回入浴というのは大変だと思いますので、便失禁があればお湯で洗い流して、石鹸で清潔にするようにしましょう。

ポイント

鼠径部周りは皮膚が重なっているため、汚れがたまりやすくなります。指を入れ込んで十分に洗い流すことで、しっかり汚れを落としてください。タオルやお尻拭きで水分を拭う際には1回ごとに使用する面を変え、きれいな面で拭くことが大切です。乾燥したタオルなどは肌との摩擦を起こしやすいため、強くこすることを避けて、押さえ拭きしましょう。

 

おむつの交換

ここでは便の拭きとりが完了し、新しいおむつへの交換方法を説明します。

交換方法は被介護者が使用しているおむつの種類によって異なります

以下は、テープタイプのおむつを使用している場合の基本的な交換手順です。

事前準備

①おむつを広げ、ギャザーを立てて準備。

②パッドを半分に折りギャザーを立てる。

③汚物を置くスペースを確保 不要な紙を床に敷き、ビニール袋を用意する。

④ベッドの調節、サイドレールを外す。

 

おむつの当て方

①おむつを身体の中心合わせる。

②身体の中心に合わせながら左右に伸ばす。

③腰の下にオムツを差し込み、広げる。

④仰向けに体位変換する。

⑤奥側からオムツを引き出す。
⑥足の間からオムツを引き出して広げる。

⑦そけい部に合わせてオムツをあてる。

⑧再度おむつの中心と身体の中心を確認し合わせる。

⑨おむつの前部分を腰の下に差し込む。

⑩テープを交差するように貼る。

 

排せつ介助中の注意点

訪問介護

便を拭く際の基本は分かったと思いますが、便をした際どのような箇所に注意が必要でしょうか?精神面も考慮した注意点をご紹介していきます。

配慮の効いた「声かけ」をする

便をした被介護者の心理としては「恥ずかしい」「申し訳ない」と思う方が多いようです。認知症の方であれば、自分が便をしたことが分からないという方もいますが、認知症の程度によってはそういった思いを持つ方もいます。

そのような思いを持っている方に対して「臭い」「大変だ」というのは厳禁ですし、それに類似した言葉について控えなければいけません。

排泄が上手にできた時には、そのことを一緒に喜ぶことも大切です。排泄物の状態を確認し、体調に問題がないことを伝えるなど、被介護者が自信を持ったり安心したりできる声かけを行いましょう。

ですが、4人部屋などの多床室の場合に「たくさん出ましたね」「立派な便が出ていますよ」といった声掛けは厳禁です。

被介護者は自分が出した便に対して羞恥心を持っていますので、他の人に聞かれることを不安に思っているケースがあります。便を出した被介護者に対しては、出来るだけ便の状態などには触れずに、日常的な会話をした方が良いと言えます。

私たち介護職が考えるよりもはるかに、被介護者は便に対して敏感になっていますので注意点であると言えます。

 

便失禁をした時に気を付けたい観察点

便失禁をした場合はどのような点に注意して観察をしていけば良いのでしょうか?まずの特性として排便をした際、血圧が下がってしまう方もいるということを覚えておきましょう。中には意識を失う人もいます。

そのため、排便の臭いがしたらまずは本人の状態を観察する、顔色はいつもと違わないか、意識ははっきりしているか、受け答えはしっかりできるかなど、低血圧症になっていないか確認をしましょう。

もし様子がおかしい場合は、無理におむつ交換をせずに様子観察をして、状態が回復するまではそのままにしておきましょう。おむつ交換は左右を向くなど、身体的に負担をかけてしまいますので注意が必要であると言えます。

注意点:通常は尿失禁・便失禁をしない方が急に失禁されたときは、脳に何らかの障害が起こっている可能性もあるため、すぐに看護職員に相談しましょう。

 

臭い対策について

被介護者の便失禁は他の利用者にも影響を与えてしまいます。特に臭いについては注意が必要です。

例えば、みんなが集まっている食堂で便失禁をしてしまった場合、臭いが食堂に充満してしまって中には食欲を無くす方もいるでしょう。また、気分を悪くしてしまう方もいます。

臭いについてはどのような解決策があるのでしょうか?

まず集団で生活をしている場面で便失禁があった際は、窓を開けるなど物理的に臭いを外に出すことが大切です。また便失禁をした被介護者は個室に連れていき、おむつ交換をすることも必要です。

窓を開けるだけでは臭いが取れない場合は、換気扇を回す、外に向けて扇風機を回すなど中の空気を出来るだけ外に出すようにすると良いでしょう。臭い対策として芳香剤を置くなどの対策がありますが、これは施設利用者によっては気分を悪くしてしまうなどの弊害が生まれますので注意が必要です。

 

まとめ

便の拭き方は、出来る限り先に便を拭う事、前から後ろに拭くこと、お湯で洗い流すことが大切になります。

また、臭いの対策、声掛けの注意点、低血圧の注意点などにも気を付けて排せつ介助を行うようにしましょう。

介護職としては、排せつ介助をすることは大変ですが、被介護者にとって排便をすることは喜ばしい事です。

適切に排せつ介助をすることによって被介護者は気持ちよく、負担なく生活を出来ますので是非覚えておきましょう。

 

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