介護職員が行う入浴介助は高齢者が生活をする上で必要なことで、老人ホームでは週に2回~3回程の頻度で入ってもらいます。介護技術を全て使わなければいけませんので、技術が必要で介護職の方の中では入浴介助が苦手だと思う方もいるかと思います。ここでは入浴介助の基本や注意すべきポイントについてご紹介していきます。
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入浴介助の基本について
入浴介助の基本は大きく分けると3つに分類されます。①入浴環境を整備する②負担を軽減する入浴方法③入浴後に気を付けたい事。の3つです。入浴介助がうまくなるための基本ポイントですので、是非ご参考にしてみてください。
入浴環境を整備する
入浴環境は入浴介助を行う上では非常に重要なことであり、きちんと環境を整えないと介助がしにくいだけではなく、事故なども引き起こしてしまう可能性がありますので十分な注意が必要です。まずは気温についてです。入浴は裸で行うものですので、気温の変化に敏感になりやすいといえます。例えば、普段過ごしている居室が23度としても、冬場などの脱衣所は10度を下回っていることがあります。気温差が大きいと身体に負担がかかりますし、心臓にも良くありません。体が硬直して上手く動かないケースも有ります。そのため、まずは脱衣所の温度を上げることが大切です。服を脱ぎますので居室よりも高い温度で設定しておきましょう。また浴室と脱衣所の温度差にも気を付けなければいけません。温度差を感じないように出来るだけ脱衣所、居室、浴室の温度は差が無いように環境を整えてあげることが大切となります。次に、入浴介助中は事故が起きやすいのでシャンプーやボディソープ、タオルなどは手を伸ばしたら届く位置にセッティングしておくことが必要となります。入浴中に起きる事故としては介護職が高齢者から目を離した時に起きることが多いです。タオルなどを取りに一瞬目を離すだけで事故は起きてしまいますので注意が必要です。
負担を軽減する入浴方法
これは介護職、高齢者ともに負担を軽減させる方法です。例えば、ある程度自分で歩ける方は浴槽をまたいでお風呂に入ってもらうことが多いですが、お風呂の中で体が安定せずに浮かんでしまう方がいます。その場合は、迷わず介助椅子で入浴をしてもらう方法を取りましょう。自分で歩けるからといってそのままにしておくと高齢者も負担が大きいですし、体を支える必要が出てくるので介護負担も大きくなってしまいます。車いすであれば体をベルトで固定するので浮かび上がることはありませんし、自分で入るよりも安心して入ることが出来ますのでお勧めです。また、座位がギリギリ取れる高齢者に関しては安全面を考えて寝たまま入れるものを使うと安全に入ることが出来るでしょう。なぜここまで安全と安心を確保しなくてはいけないかというと、浴室の死亡事故時に繋がる可能が高いからです。少し無理したら入れるなら、その無理が後々事故につながってしまう可能性がありますので、出来れば安全を第一に優先して入浴介助を行うようにしましょう。
入浴後に気を付けたい事
入浴後は体が暖まりリラックスしている状態ですが、介護職としていくつか気を付けたいポイントがあります。例えば、水分補給です。入浴をすると体の体温が上がりいつも以上に水分が消失します。入浴後は必ず水分補給をしてもらうようにしましょう。また、入浴後は皮膚が柔らかくなり傷がつきやすい状態です。皮膚がふやけるイメージです。そのため皮膚が普段から弱い方はいつも以上に気を付けて、場合によっては保護材を貼るなどして、傷がつかないように気を付けましょう。また、傷ケアも入浴後に行うことが多いです。看護師を呼んで清潔な内に処置をしてもらうようにすると傷の治りも早いと言えます。
入浴介助の注意点
入浴介助を行う上で、いくつか注意点がありますが、最も大切なのは事故が起きないようにするということです。事故を事例に挙げて注意点を見ていきましょう
熱湯につけて死亡した事例
ある介護施設で、寝たまま入る浴槽の温度が高く、そのまま入ってしまった高齢者が全身やけどで死亡した事例があります。これは確認不足が最大の要因です。介護浴槽はほとんどの場合自動で温度設定がされますが、機械が行う事ですので、温度設定部分が故障している場合があります。手動で設定する時はもちろん確認が必要ですが、機械で温度設定をしている場合でも必ず手で温度チェックをしておきましょう。客観的に温度計測が出来るように、手だけではなく温度計で温度測定をすることをお勧めします。また、1人では不安な場合は他の介護職に確認をしてもらうなど対策をして、「大丈夫かな」と不安な状態で入ってもらうことは避けた方が良いと言えます。
浴槽で溺れてしまった事例
車いすごと入る浴槽に高齢者を入れていましたが、高齢者から「ゆっくり入りたいから席を外して欲しい」と言われた介護職はその場を離れました。10分後に介護職が戻った時には高齢者は顔を浴槽に付けて死亡していました。入浴介助は裸で入るため、高齢者には差恥心があります。そのためずっと見られるのは不快だと感じる高齢者もいます。しかし、この事例は介護職に否があると判決されました。見守りをする義務があるにも関わらずその場を離れたという事です。もちろん高齢者の声には耳を傾けなくてはいけません。離れて欲しいと言われたから遠くから見守っておく、体が見えないようにタオルを貸し出すなどの配慮をして必ず見える範囲から高齢者の安全を確認しなくてはいけません。浴槽での事故は溺死となってしまいますので、数分目を離すだけでも命にかかわります。そういったことを意識して介護を行うようにしましょう。
まとめ
入浴介助は基本を押さえておくとスムーズにできますし、安全に入ってもらうことが出来ます。特に環境整備、無理をしない入浴方法、入浴後のケアなどに配慮することによって、問題なく介助が出来ます。慣れない内は、体力的に大変だと思いますが、慣れれば色んな所に目を配れるようになってより安全に入ってもらうことが出来るでしょう。また入浴介助は唯一マンツーマンで会話を楽しむことができる時間です。慌ただしく過ぎてしまう時間の毎日ですが、利用者のお話に耳を傾けることができるかと思います。安全確保を第一に考えて、気持ちよく入ってもらうように注意しましょう。