介護職員処遇改善加算とは?仕組みや対象者など簡単に分かりやすく解説

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介護職員処遇改善加算とは

家計を助けるため介護職の経験を活かして、仕事に復帰したいと考える人もいるでしょう。しかし、介護職として働くなら、毎月の報酬額は気になるものです。とくに、小さな子どもを抱えており、これから高額な教育費がかかる可能性がある家庭では、仕事で得られる報酬額は見逃すことはできません。そこで知っておきたいのが、介護職員処遇改善加算の制度です。どのような制度なのかの基本的な説明と、どのくらい給料がアップするのか具体的な内容を解説していきます。

介護職員処遇改善加算とは?

介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは、介護職員の賃金改善のための制度です。平成23年度までは、介護職員処遇改善交付金が実施されていました。なお、平成24年度からは新たに介護職員処遇改善加算が創設されています。制度は5つに分類されており、「加算Ⅰ」に該当する介護事業所で働く場合は、月額37,000円相当 が賃金に加算されます。介護職員待遇改善加算の制度の目的は、介護職員が安定的に働ける環境づくりです。事業者に加算届け出を行ってもらい、取得した事業者には介護職員の賃金改善をするように促しています。介護職員への賃金加算額は、事業者が国保連へ請求する仕組みです。事業者は国保連から加算額を受け取り、その額を介護職員の賃金改善へと役立てます。介護職員として働く人が直接加算額をもらえるわけではありませんが、制度を利用することで事業者の負担を減らし、介護職員の働く環境や賃金の改善が期待できます。取得している事業所で働けば、介護職員にもメリットがある制度でしょう。

介護職員処遇改善加算の取得の条件

事業者が介護職員待遇改善加算を取得するには、2つの条件があります。ひとつは「キャリアパス要件」で、もうひとつは「職場環境等要件」です。それぞれの要件を満たす事業者は、都道府県や市町村へ申請することができます。

キャリアパス要件

キャリアパス要件とは、介護職員がキャリアを積むための支援があるかの基準のことです。簡単にいうと、段階的な仕事ができる環境が整っているのか、経験や資格を活かした昇給制度があるかです。

介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件は、3種類あります。
申請をする場合は、以下の3種類のどれかの要件を満たさなければなりません。
● 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系がある
● 職質向上のための計画を立て研修の機会がある
● 経験や資格に応じて昇給制度がある

例えば1つめの要件では、適切な仕事を与えそれに応じた賃金があるかどうかです。また、すべての介護職員に対して、就業規則を書面で提出していることが条件になります。職位が上位職に上がれば手当が増えるため、毎月もらえる給料も増えるでしょう。

2つめの要件では、研修機会を設けるとともに、介護職員の能力評価が条件です。場合によっては、職場で介護職員の資格取得支援も実施しなければなりません。また、資格取得のためにシフト調節や休暇を取得するなどの支援も求められています。

最後の3つめの要件では、経験・資格・一定の基準に応じた昇給制度があるかです。経験・資格・一定の基準の中で、少なくとも1つの仕組みが求められます。例えば勤続年数の違いにより経験が判断され、資格取得者であれば月給に反映されるなどです。評価では、試験を実施することで合格した者に昇給制度を設ける内容があります。

職場環境等要件

キャリアパス要件とは別に設けているのが、職場環境等要件です。簡単に説明すると、賃金以外の職場環境を整えているかが判断基準になります。

具体的には、以下の3つから1つの要件を満たす必要があります。
● 資質の向上
● 職場環境・待遇の改善
● その他

注意したいのは、キャリアパスと職場環境等要件が重複してはならない点です。たとえば、キャリアパスで2つめの研修体制を選んだ場合は、職場環境等要件で同じ条件を選ぶことはできません。キャリアパスと職場環境等要件は内容がかぶるものもあるため、注意するようにしてください。

資質の向上とは、働きながら介護職の資格取得を求める者や、より高い技能を必要とする資格取得を求める者への支援のことです。事業者は、介護職員が資格取得のための負担を軽減しなければなりません。

職場環境・待遇の改善とは、介護職員が安心して働ける職場づくりのことです。新人を指導する体制や、適切なシフト管理、負担軽減のための器具導入などがあります。また、子育てをしながら介護職を続ける人向けに、育児休暇や保育施設の充実も挙げられるでしょう。

最後のその他では、情報公開・中途採用・職員増員などの内容があります。非正規雇用から正規雇用への登用制度も、その他に含まれている項目です。

介護職員処遇改善加算の区分

介 護職員処遇改善加算の区分

介護職員処遇改善加算では、5つの区分があります。区分ごとに介護職員への賃金改善の加算額が異なっています。もっとも加算額の多いのが「加算Ⅰ」で、数字が大きくなるに従い加算額が少なくなる仕組みです。自分が働く事業所はどの区分なのか確認するようにしてください。

処遇改善加算Ⅰ

キャリアパスⅠ・Ⅱ・Ⅲのすべての要件を満たし、さらに職場環境等要件を満たす場合に「加算Ⅰ」となります。加算Ⅰでは、介護職員1人あたり月額37,000円相当の加算額を国保連へ請求可能です。また、加算Ⅰは、平成27年4月以降に実施されている取り組みです。なお平成29年4月からは、加算Ⅰに新設される拡充部分があります。拡充部分は、介護職員1人あたり月額10,000円相当が増額となりました。平成28年以前から加算を取得している事業者は、初めて加算を取得した前年度賃金水準が基準となるため注意してください。

処遇改善加算Ⅱ

キャリアパスⅠとⅡの要件を満たし、さらに職場環境等要件を満たす場合です。加算Ⅱとなると、介護職員1人あたり月額27,000円相当の加算額を国保連へ請求できます。なお、加算Ⅱも加算Ⅰと同様に、平成27年4月以降から実施されています。

処遇改善加算Ⅲ

キャリアパス要件ⅠまたはⅡを満たし、さらに職場環境等要件を満たす場合です。加算Ⅲでは、介護職員1人あたり月額15,000円相当の加算額を国保連へ請求できます。なお、加算Ⅲは平成29年に新設されたものです。注意したいのは、平成28年より前から加算を取得している事業者と、平成29年以降に加算を取得している事業者では扱いが異なる点です。

処遇改善加算Ⅳ

キャリアパス要件のⅠかⅡの要件を満たしているか、または職場環境等要件を満たす場合に該当します。加算Ⅳの場合は、介護職員1人あたり月額13,500円相当の加算額を国保連へ請求できます。なお、加算Ⅳは一定の経過措置期間が過ぎると廃止されることが決まっているため、注意してください。

処遇改善加算Ⅴ

キャリアパス要件・職場環境等要件のどれも満たさない場合に該当します。加算Ⅴの場合は、介護職員1人あたり月額12,000円相当の加算額を国保連へ請求可能です。なお、加算Ⅴも加算Ⅳと同様に、一定の経過措置期間が過ぎると廃止されることが決まっています。

介護職員処遇改善加算の対象者

対象となるのは、介護職員です。介護職員とは、介護保険サービス事業所で働く人のことです。たとえば、訪問看護員・老人施設における介護職員などが含まれます。ただし、介護事業所で働いている人すべてが対象となるわけではありません。例えば、看護師・相談員・事務員は対象外で、また介護保険の対象ではない介護施設で働く介護職員も対象外となります。介護保険の対象外の施設とは、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどです。

パート介護職員

対象は介護職員であるため、パートの介護職員でも対象となります。例えば、育児や家事と両立しながら介護職員としてパートで働いている人が対象です。または、子育てがひと段落してパートとして介護職を始める人も対象になります。パート介護職員は時給で働くことが多いと思いますが、加算額は時給アップや手当の支給などで増額されることが多いでしょう。

派遣介護職員

派遣職員であっても、介護職員として働いているなら対象となります。介護職員処遇改善加算の対象者は、勤務形態による違いはありません。派遣介護職員の場合は、派遣金額に増額して賃金を支払う仕組みです。

介護職員処遇改善加算の計算方法

介 護職員処遇改善加算の計算方法

介護職員処遇改善加算を取得している事業者は、介護職員に対する賃金改善を実施する必要があります。具体的な賃金改善は、基本給・手当・一時金などで増額される仕組みです。加算額を上回る賃金改善があれば、どの方法を選んでも問題ありません。厚生労働省が推奨する増額の方法は、基本給を増額する方法です。また、パートや派遣社員の場合は、最低賃金を増額する方法もあるでしょう。最低賃金の増額は、非正規の介護職員が多数いる場合におすすめの方法です。

なお、手当を新設または増額する方法は、以下のケースがあります。
● 処遇改善加算手当
● 業務手当
● ユニットリーダー手当
● 資格手当
● 夜間手当
今までなかった手当を新たに新設することでも、賃金増額の対応が可能です。他にはボーナスとして賃金を増額する方法もあります。介護職員処遇改善加算の計算方法 は、1か月あたりの総単位数で計算します。なお、介護給付単位数は、小規模型通所介護・通常規模型通所介護・大型規模型(Ⅰ)通所介護・大規模型(Ⅱ)通所介護により基本報酬が異なっています。

まずは、1か月あたりの総単位数を計算しましょう。総単位数は「(基本サービス費+各種加算減算)× 利用日数」で計算可能です。さらに、介護報酬における総単位数にサービス別加算率をかけてください。割合で出てきた数値を四捨五入すると、1か月あたりの処遇改善加算の総単位数がわかります。処遇改善加算の総単位数がわかったら、1単位あたりの単価を割り出しましょう。なお、小数点以下の数字は切り捨てるようにしてください。

介護職員処遇改善加算でいくらもらえるのか

介護職員処遇改善加算でいくらもらえるかは、給与規定を確認してください。キャリアパスの要件では、賃金改善の内容を介護職員に知らせる内容があります。書面にて通知されているはずなので、確認するようにしましょう。加算Ⅰに該当する事業所では、月額37,000円相当の増額が見込めます。また、加算Ⅱでは月額27,000円相当、加算Ⅲは月額15,000円相当です。ただし、加算額がそのまま給料に反映されるとは限りません。

そのままの金額が反映されない理由は、加算額は手当や一時金も含まれるためです。事業所によっては、毎月の賃金にそのまま上乗せされるとは限らないでしょう。現状では、基本給の増額は月額数千円程度のところが多いようで、手当やボーナスを含む金額で考えるようにしてください。

例えば、給与規定で以下のような条件がないか確認してみましょう。
● 基本給の改定は年に1回まで
● 評価に応じて昇給

または、給与規定では以下のように、具体的な月額の増額費用が記載されていることがあります。
● 正規介護職員:月額15,000円増額
● 非正規介護職員:時給100円増額
● 夜勤手当:1回2,000円増額
● 一時金:100,000円

キャリアパス要件Ⅱを満たす事業所では、研修費用の負担が明記されていないか確認しましょう。事業者が全額負担する内容があれば、積極的に資格を取得することができます。

介護職員処遇改善加算の内容を把握しておこう

介護職員処遇改善加算

介護職として働く人は、事業所が介護職員処遇改善加算を受けているか確認しましょう。加算を受けている場合では、国保連からの加算額により、毎月の報酬額が増える可能性があります。介護職員処遇改善加算は介護職として働いている人の環境や賃金を改善する制度のため、制度の内容を詳しく理解しておくことが大切です。実際にいくら報酬が増えるかは、事業所ごとに異なります。詳しくは、介護職として働いている事業所で確認してください。職場が介護職員処遇改善加算の対象であるなら、一般の事業所と比べて時給・基本給・手当のアップが見込めるでしょう。

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